740. 前例 
 「前例がありません」。役所に行くと良く聞こえてくる用語です。「前例がない」に続くのは、「できません」や「やりません」の言葉です。
 前例がないことを実施することの難しさを経験している人は多いのではないでしょうか。しかし、それをそのまま受け入れていると、今から200年経っても前例がないままの状態で保たれていることでしょう。その時も「過去を探してみたのですが、前例がありません」と答えている行政職員がいそうな気がします。

 さて前例を打ち破る難しさを考えていたところ、実は私達の行き方のこれからも前例がないことに気づきました。自分のこれから行く先も前例がないのです。この次の時間も、明日も前例がない時間を過ごすことになります。過ごすというよりも、その瞬間を切り拓くことになるのです。前例のない人生を生きているのですから、外国で前例がある、または前例がなくても、社会で必要とされるものを実現させることは実現可能なことのように思えます。

 いつものように会社に出勤して朝礼に参加してから仕事に取り掛かる。このような体験をしていることから、前例の中で生きているように錯覚しているのです。昨日の朝礼と今日の朝礼は違うものですし、当然明日の朝礼は違ったものです。何となく、繰り返の日々を生きていることから、前例の世界に生きているように思いますが、間違いなく、前例のない自分の今日を生きています。

 社会ことに関しては、今は前例がなくても、200年先でも前例のないことでも、誰かが社会で必要と強く思ったら、前例を撃ち破って実現させる時が来るかも知れません。しかし自分の前例のない人生を安全確実に導いてくれる人は自分以外に現れません。200年待っても現れませんから、前例のない今日を、自分の思いと行動で切り拓くべきなのです。誰かが敷いてくれたレールを歩いても、それは誰か前例のある人の人生の物真似ですから、「今を生きている」とは言えません。
 「前例がない」ことを実施することに躊躇する習慣が身についていると、前例がないから楽しい人生を、主役である自分が楽しむことができなくなります。

 生き方を変えるためには一日の中で大半を占めている時間の中での意識を変える必要があります。仕事の場にいる人の場合は、前例がないことに取り組もうとする意識を持つこと。家庭内にいるのであれば、文化教室やゴルフ練習場へ行ってみること。今までにない体験を自分の時間の中に採り入れることで前例のないことに挑戦することが楽しいことであること、決して難しいことではないことを知ることになります。
 日々の過ごし方の中に前例のないことを少しずつ取り入れて行くと、それまでと考え方が変わります。

 全ての人は前例のない人生を生きています。前例のない仕事を自分の世代で変えて、前例のあるものに変える程度は簡単なことです。前例がないからこそ、楽しいことに気づくべきです。

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