739.公衆トイレ 
 和歌山市の和歌浦にある八の字公園。公園内にある公衆トイレが凄いのです。和歌山県で一番きれいなトイレと呼んでいますが、関わっている人の気持ちが凄いのです。

 トイレの値段は意外と高くて、この公衆トイレは3,000万円です。価値があるのは建設費ではなくて、地元自治会の皆さんの関わり方です。トイレを清潔に保つことや花を植えて歓迎することは勿論のこと、清掃管理の日記を毎日つけているのです。月曜日から日曜日のまで清掃当番を決めて、毎日清掃管理しています。その結果を○、△、×で評価し、感想を記載しています。それを次の日の当番の人に申し送っているのです。12月31日も1月1日も、毎日清掃していますから一年中きれいなトイレとなっています。

 毎日欠かさず記載している日記が素晴らしいのです。会長からの月例メッセージは、何故トイレ掃除が必要なのかを訴え続けていますし、清掃活動に対する感謝の気持ちを伝えています。毎月、名文で綴られています。既に6年間の記録が積み重ねられていますから、これは地域の大きな財産です。これを超える活動はやりようがありません。何故なら、6年間も地域として公衆トイレの管理清掃をしてきた年月があるからです。他の地域がこれから地域の公衆トイレの清掃を始めてこの6年の差を縮めようとしても、片男波自治会が公衆トイレの管理清掃を放棄しない限りできないことだからです。続けることの力が感じられます。

 この取り組みを始めたのにはきっかけがありました。公衆トイレは管理を怠ると、不衛生で汚くなってしまいますし、トイレ内に保管しているトイレットペーパーや清掃用具などが盗られてしまいます。この公衆トイレも最初はそうでした。これではいけないと思った地元の皆さんが、管理と清掃を始めたのです。

 地域にある公衆トイレが汚いのでは、地域力がない自治会だと思われてしまう。トイレのきれいさは地域力を示すバロメーターであることを発信し、自治会や地元の保育園、小学校の協力を得て、清掃活動が始まりました。清掃は自治会が主体となって、保育園関係者、小学校の保護者達が曜日を決めて実施しています。
 仮に公衆トイレが汚されたとしても、次の日の清掃当番が必ず清掃にやってきますから、最長24時間以内にきれいなトイレに戻る訳です。

 汚い場所には犯罪が起こりやすくなると言います。地域の公衆トイレが汚れていると、地域に横のつながりがないことや、協力関係がないことを地域外の人に見抜かれてしまいますから防犯上からも危険です。逆に公衆トイレがきれいに保たれていると、地域力を感じることになりますから安全な地域として認識されます。公衆トイレがきれいに保たれていることは地域で清掃をしている。それは当然、それ以外の部分はもっと協調関係にある地域であることを、公衆トイレは訴えてくれます。

 隠れた部分の清掃も怠っていません。表面だけを清掃していても、臭いが除去できないからです。尿石が蓄積すると固まって取れなくなります。これが臭いの素で、簡単には除去できないのです。素手でトイレに手を突っ込みペンチで削り取ったりしています。それでも取り除くことは容易ではないのですが、清掃の秘訣を教えてくれました。熱湯を入れると尿石が剥がれるそうです。

 公衆トイレをきれいに保つことは地域力です。地域力を高めるにはお金を使うことやイベントを打つだけではないのです。嫌なことでも協力し合うことで地域力が身に付いてくるのです。

 地域力を感じるために、観光地や公共施設に行く度にトイレに入ることにしています。
参考までに、和歌山県の平成21年度予算では、トイレの整備が政策に取り入れられています。この対策の震源地は、ここからかも知れません。

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