721. 食事の時間
 私達は動植物の生命を一日三度いただいて生命を維持しています。現代の食事は、人工のものではなくて、自然界で生あるものの生命を頂戴しているのです。大切な生命をいただいて生きているのですから、生命があることに感謝し生きなければなりません。動植物は自らの生命を人に差し出してくれているのです。
生命を差し出すということは、人に何かを託しているからです。生命よりも大切なものはありませんから、その代わりになるものを人は作り出さなければならないのです。それは地球を生命が漲る星に進化させることに他なりません。

 それなのに自分のことばかりで他人のことをばかりか、身内に対しても不親切な人が存在していることは悲しいことです。悲しみの連鎖からは何も生みだしくれません。次の人のために自らの行いを考えたいものです。今まで行っていなかったような、ちょっとしたことが進歩なのです。

 次の人が事務所から外に出ようとしている状況では、ドアの扉に手を添えて開けておくこと。洗面所を使用した後、洗面所の水滴を拭き取っておくこと。飲食店で食事を採った後、テーブルの上のお皿を一ヵ所に揃えておくことなどが、その行為です。
 ちょっとした言葉もあります。飲食店で食事を採った時は、お店の人は「ありがとうございます」と言ってくれますが、お客さんである私達もおいしい食事をいただいた感謝の気持ちを込めた「ありがとう」と返答したいものです。宿泊したホテルをチェックアウトする際、フロント係が「ありがとうございました」と言って送り出してくれますが、その時も、泊めていただいたことに感謝して「ありがとう」の言葉でホテルを後にしたいものです。

 人は地球上に存在している他者の生命をいただいて、生かされていることを知ることで行動は変わります。自分の生命を大切にするのと同じように他者の生命を大切に思うと、行動は変わるのです。私達が受け継いでいるのは限りある生命です。現在生きている私達は歴史に残されている過去の教えから学び、これからを考えるべきなのです。

 和歌山市内のお坊さんから伺った話があります。東京の例ですが、23区内の小学生のアンケート結果で「将来お母さんになりたい」と思わない子どもが90%以上もあったようです。同じく「お父さんになりたい」と思わない子どもも90%以上あったそうです。
 理由は、お母さんは子どもに怒ってばかりなので、そんなお母さんになりたくないと言うものです。お父さんは、朝早くに家を出て帰って来るのは深夜なので、子どもと顔を合わす機会がないこと。休みの日にはゴルフか、家で寝転がってテレビを見ている姿が家庭内にあり、子どもと遊べる時間がないから、そんなお父さんになりたくないのです。
 子どもに「大きくなったらお母さん、お父さんのようになりたい」と思ってもらえるような、そして「尊敬しているのはお母さんとお父さん」と言ってもらえるような大人でありたいものです。

 大人がどんな生命も大切にする姿勢と行動をとると接する人が変わり、周囲も変わり、地球も変わるのです。
人は他者の生命をいただかない限り、生き続けることはできないのです。そのことを知ると、「自分だけ」の行動はできない筈です。一日三食、生命をいただいていることに感謝する時間なのです。食事とは、他者の生命を自分に取り込んでいる時間なのです。朝昼晩の食事の時間は、感謝の時間にしたいものです。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ