644.小さな話
 ちょっと良い話を聞きました。
 仮にHさんとします。Hさんのご子息さんは約15年前に20歳代の若さでお亡くなりになりました。H君の同級生の父親であり、同じ時期にPTAの役員を務めていたIさんは、Hさん宅にHさん宅に毎月、命日と同じ日に訪問し、欠かさないで高野薪をお供えしていたそうです。

 毎月、欠かさないで来てくれるIさんに対して、Hさんは感謝の気持ちを忘れたことはないと話してくれました。
 暫くしてIさんの息子さんは引っ越し、長い月日が経過しました。HさんとIさんが会う機会は少なくなってしまいました。

 あれから年月が流れた2008年のある日。Hさんが某友人と話をしていたところ、Iさんの良くない噂を聞きました。Hさんに対して「Iさんと付き合わない方が良いと思いますよ」と話したのです。
 しかしHさんはIさんの優しい心を知っていたので、その友人に向かってIさんの行動の真実を伝えました。「Iさんは信頼できて心の優しい人だから、その噂話は真実ではありません」ときっぱりと答えたそうです。

 私はIさんのことをよく知っていますが、Hさんから二人の関係を初めて聞きました。
 良くない噂話は、尾ひれをつけて街中をあっと言う間に駆け抜けます。直接本人を知らない人までも、面白がって第三者に伝えますから噂話は拡大して伝わります。不思議なもので、良くない噂話は光の速さで伝わりますが良い話は伝わりにくいのです。少し悪い行いをしたらそのことが大きくなって伝わりますが、良い行いをしてもなかなか伝わりません。もし良い噂話が伝わってきたとしたら、相当、良い行いを継続していると思った方が良いのです。
 Iさんの高野薪の話は小さな感動話でした。

 Hさんは私に向かって「Iさんと付き合うことに賛成ですよ」と笑って話してくれました。朝に嬉しい話に出会うと一日の気分は良くなります。それは良い行いは、早速、誰かに伝えたいと思うからです。ただこの話は第三者に伝えるよりも先に、Iさんの携帯に電話をしてお互いの気持ちを共有したいと思いました。

 寒さが厳しい朝でしたが、二人とも温かくて嬉しい気持ちになりました。この日に何が起きたかは別として、全ての出来事を包み込める温かい気持ちで、それらに接することができたのは言うまでもありません。

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