643.閃き
 「閃き、とはどんな意味があるのか」年長者から話を伺いました。閃きとは突然、何かのアイデアが浮かぶことのように思っていましたが、そうではないのです。
 閃く、漢字の由来は次のようなことからです。

 この漢字は、門の中に人を書きます。門とは他人の家に入る時、軒下を潜る時の状態を指しています。他人の門を潜る時の頭の中はどうなっているのでしょうか。「今日の先方の呼び出しの案件は何なのだろう」、「突然、斬りかかられるかもしれない」など、家の門を潜って相手と会う時の出来事を予測して出向きます。

 つまり何が起こるかどうか事前予測して門を潜り、相手の如何なる出方にも対応できるような心構えをしておくことが、生命を守り安全を確保するために大切なのです。
 門を潜る時に人は直後に起きるであろう、予測できるあらゆる事態に備えておくことが大切だとの教えなのです。相手とどう接するのか、危機をどう切り抜けるのかを考えておくこと。それを閃きというのです。

 ですから何もない状態で突然アイデアが浮かぶことを閃きというのではなく、人と会った時に何かが起きることを予測しておくことを指すのです。翻って、閃きは一人で考えて浮かぶものではなくて、複数人が関係する人間関係の中で良いアイデアが浮かぶことを言っているのです。

 一人で思い浮かぶことは妄想といいます。一人で何かを考えていてのもロクなことはありません。複数の人が事業に関わることで良い発想が浮かぶものです。
 ただ現在では、他人の家の門を潜る時に危機を考えたり、生命の安全確保の手段を予測したりすることはありません。借金の返済が滞って相手にいい訳をしに行く時は別としてですが・・。
 極めて安全な状況に置かれていることが閃きを無くさせているのです。

 そう言えば、企業でアイデアを出し合うことをブレーン・ストーミングと言います。頭脳を嵐のようにかき回すことですが、これも一人でするものではありません。QCサークル活動なども複数人で実践することが基本です。つまり人間の頭は一人で悶々と考え続けるよりも複数の人で話し合い、時間が迫ってくる危機感を感じる方が良いアイデア、つまり閃きが起こるのです。

 向かい合う相手と真剣に交渉する場面や、期限が迫ってきた時に突破口を見つけたり、アイデアが浮かんだりして危機を脱することがあります。これも相手があったり、危機感が迫っていることから閃くものです。
 つまり必死に考えを巡らせている中から起死回生の案が出てくることや、チームとして機能している中から閃くものなのです。
 閃きは一人でいる中で突然訪れるものではなくて、考えに考え抜いた中から出てくる危機への対応策なのです。

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