613.心得
 事業の目的は利益を上げることですが、利益を追求するだけでは決して繁栄することはできません。利益を得たなら、その事業に関係する全員に均等に利益配分する必要があるのです。欲を出して経営者である自分の分け前を多く配分し、残りを均等に分け与える姿勢の経営者はやがて淘汰されることになります。

 三人の関係者がいれば、33%ずつ利益配分すること。四人の関係者がいれば25%ずつ利益配分することが繁栄するための必要条件です。この場合、ある人の力が大きく、別の人の力が少なかったとしても均等割りが原則です。何故なら、チームの誰が欠けていたとしても利益を得ることが出来なかったからです。
 もし一人が欠けていたら、利益はゼロになる可能性が高いのです。元々ゼロだと考えていれば、少しの利益を得られるだけで感謝する気持ちが芽生えるものです。欲を出して全て自分が中心であったから利益を得られたと思う人がいれば経営者失格です。つなぐ人がいて資金提供者がいる。企画を練れる人がいて広報や営業する人がいる。技術者がいて間接部門の人がいる。それらが全て重なり合って成功モデルが完成するのです。

 例えば、開発者がいなければ営業は成り立っていない筈だと考え、営業部門の人がいなくても成功したと考えるのは間違いです。どれだけ優れた技術を有していたとしても、世に出すための営業力がなければ消え去る運命だったかも知れません。どれだけ優れた製品が完成したとしても、流通経路がなければ決して世間に認められることはないのです。
 兎角、発明者の存在が重要視されますが、発明者以上に価値があるのが流通経路を持っている人です。流通経路を確立させようと思ったらモノにも依りますが、感覚的には10年以上かかるものです。

 世の中に素晴らしい技術は掃いて捨てるほど存在しています。発明者は自分が見つけた技術は絶対的な価値を持つものと思い勝ちですが、そうではありません。発明品を流通させなければ何の存在価値もありませんし、利益を得ることはできません。
 ですから成功した場合は関係した人が均等に利益配分を受けることが必要で、役割は関係ないのです。少しだけ関係した人も中心的存在として活動した人も同等の評価を得るべきです。それがないと次につながりません。

 活動中はそのことを分かっていても、成功した結果が出たらそのことを忘れてしまいます。自分一人であっても成功したと思ってしまうのです。それでは経営者失格です。
 一人で取り込もうとしても均等割りしても、利益の受取額には全く関係ありません。大きな気持ちで仲間を増やすことが将来、利益を生み出してくれます。自分ひとりで利益を取り込むことや決算報告を仲間にしていない人がいれば、間違いなく信頼を失いますから、将来の発展はありません。損して得を取る姿勢と、当該事業に関係した全ての人が等しく利益を受け取れるようにすることを事業の目的にすべきなのです。利益を得ることを中心に考えても悪くはありませんが、社会のお役に立つことを中心に考える方が、社会からより多くの利益を受取ることが出来るのです。

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