611.一セント
 北京オリンピックで水泳八冠を達成したアメリカのマイケル・フェルプス選手の続きです。小さい頃からコーチに言われ続けてきた言葉を守ってきました。

 「毎日毎日少しずつ銀行に貯金をしておけと、コーチのボウマン氏にいわれた通り、この一年間、僕は一セント、一セントを貯金してきた。これからも続ける」。一セントの貯金とは、地道な練習を継続することが大切なことだとの教えです。誰でもできそうに思いますが、小さなことを毎日継続させることは難しいことです。しかし毎日の積み重ねができない人が、大きな仕事をすることは敵いません。

 継続する力がどれだけ大きな力になるのか、それは何かを継続させた人にしか分かりません。あるラジオ番組を担当しているキャスターは、半年毎の番組編成の時にでも、地道な活動を行っている地域の人に登場してもらっていることを継続していることから、継続の要請があり、うれしい意味で止めることができなくなっています。
 これは毎週、同じことを継続していることの力です。そして数年間の番組放送は確実な実績となっていて、キャスターにとっても出演者にとっても心に残るものになっています。

 一セントの貯金を毎日続けることの成果は、数年後に思い知ることになります。続けることをしなかった人はその成果を受取ることができませんから、続けることの成果が分からないだけです。継続することをしていない人と話しても、一セントの積み重ねの重さは決して分かりません。
 貯金を続けている人だけが分かる元金が利息を付けて戻ってくる感触。味わいたければ毎日、貯金を続ける以外にありません。

 もうひとつあります。
 「僕のを含め、記録はいつかは破られる。確かなのは、人が心を決めて追ったら、不可能はない、ということだ」。
 裏を返せば、できないのは心で決めていないからだということです。自分が心に描いたものを思い続け、実現するために努力を継続することができたら、何でも実現可能だということです。

 自分が描いたものを達成することができたら、結果として現れた数字や順位はそれほど意味を持ちません。数字で記されたものはいつか誰かに破られますし、不可能を可能にしたのですから、他人の比較に過ぎない順位も関係ありません。
 まずは心に決めることです。心に決めたことは、早くこの世に出たくて、うずうずしています。

 心に決める。毎日の貯金を続ける。やがて大きな塊になって払い戻される。いくつもの夢はそれが繰り返され現実のものになります。
 結果を残した選手には物語があります。それらを学べる機会を与えてくれた選手と四年に一度の祭典に感謝したくなります。熱い物語は終わった後も続きます。

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