585.2008年教訓
「人生は妄想である」
 講義は、人生は妄想であることから入りました。私達の不安は全て自分の心が作り出しているものです。周囲の状態は同じであっても心の持ち方で自分の置かれた状況は変わってきます。
 例えば、会社において上司から「もっと頑張れ」と言われた言葉を冷たくて突き放されていると感じたとします。その後、「自分が何か悪いことをしたのかなぁ」と思いを巡らせることがあります。これは自分の心が作り出した妄想です。その時の上司の内心は他人には分からないのですから。
 同じ「もっと頑張れ」の言葉でも、元気にしてくれる場合があります。それは「自分のことを思って励ましてくれている」と思ったからです。これも自分の内心の出来事ですし、上司の本心は分かりませんから、妄想とも言えます。
 同じ妄想であっても自分の心の持ち方によって、これほど違いがあるのです。前者の場合は、会社に行くのが苦痛になりますし、後者の場合は、会社に行くのが楽しみになります。妄想から現実が作り出されていくのです。
 同じ妄想であるならば、良い方向の考えを持ちたいものです。

「長所に変える」
 ところで自分の性格について次のように尋ねられました。「あなたの長所はどこですか」、もうひとつが「あなたの短所はどこですか」の二問です。講演で二人の方が質問を受けましたが、実際に答える時間は二人とも同じでした。長所を答えるまでの時間は数秒要しましたが、短所を答えるのに要した時間は短く、所謂、即答でした。
 多くの人は同じ傾向にあると思います。自分の長所は答えにくく短所は答えやすい。理由があります。それは他人に自分の長所を認めてもらっていないことから自分の思っている自分の長所に自信がないからです。自信のないことを人前で答えることはできないのです。

 他人に認めてもらうことで初めて自信を持てます。自分が優しいと思っていても、他人が思っていなかったら、自信を持って人の前で優しい人とは答えられないのです。ですから他人から常日頃から「あなたは優しい人ね」と言われていたら、自信を持って「私の長所は優しいところです」と言えるのです。
 でも言い方次第で短所は長所に変化します。短所として「性格が固い」と答えた人がいました。「固い」ことを自分で短所と思っているのは、恐らく他人から「あなたの考えには幅がない」だとか「融通がきかない」などと言われてきたからです。つまり他人から短所として指摘され続けてきたために「固い」ことを自分で短所と思いこんでいるのです。

 ところが他人から「あなたのような固い性格が、この仕事に絶対必要なのです」だとか「固いところがあるので信頼できる」と言われたとしたらどうでしょうか。
 褒められたことで「固い」性格は長所に変わりますから、次に「あなたの長所は何ですか」と聞かれたら自信を持って「固いところです」と答えられるようになります。
 このように長所とは他人から言われて自分で自信を持っていることですし、自分で短所と思っていても実は捉え方によっては長所に変化するものです。自分の性格で悩むことはありません。

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