532.夢
 夢を持つことで人は明日を迎えることが出来る。そんなことを感じました。ある女性は学校を卒業してからアルバイト生活を過ごしています。その職場の人は良い人ばかりで、正職員と変わらずに仕事を教えてくれますし、親切なつきあいをしてくれています。職場と仕事の現状には満足しているのです。ところが30歳近くになって人生への疑問を感じ始めました。このままアルバイト生活を送っていても良いのかの疑問です。現在にそれなりの満足を感じていますが、職場に置かれた身分からすると将来の発展は保障されたものではありません。現在の満足が明日の満足であるかも知れませんが、5年後や10年後の満足は保障されたものではないのです。

 現在の満足と将来の満足を内心で比較して、将来の満足を追いかけた方が満足感のある人生だと思い始めた時、人は現状から脱却する意思を持ちます。今まで比較的責任が少なく楽しい職場であったとしても、それは現在の生活を楽に過ごせているかも知れませんが、楽イコールやり甲斐や生き甲斐に直結するものではありせん。

 目標を持った苦労がある方が生き甲斐を感じられるかも知れませんし、将来の満足につながるものです。そして現在の比較的楽な生活に疑問を感じ始めた時、目指す方向のヒントは子どもの頃の夢にあります。この方は子どもの頃からピアノを習っていて、学校もピアノ関係の学部に進学しました。現在もアルバイトの合間を見つけて子ども達にピアノを教えているのです。しかしアルバイトと言っても平日は朝から夕方まで職場で時間が拘束されているため、ピアノに費やす時間は決して多くありません。

 少し前までは現在に満足していたため、ピアノの時間が少なくても今の生活の満足感が夢を上回っていました。ところが30歳近くなって、今のままで良いのか疑問を感じた時に、子どもの頃から接していた大好きなピアノを人生の中心に置きたいと感じる様になったことや、子ども達にピアノを教えることを職業にしたいと目覚めました。

 この方の内心は、現在の生活を継続することの満足よりも、今行動を起こしたことによって将来得られる満足の価値が上回ったことを示しています。夢が現実を上回ったのですから、座っているよりも行動を起こすことに気持ちが傾いたのです。

 このように人はほんの少しのきっかけで、飛躍するための階段を昇り始めることがあります。それは置かれた環境であったり、年齢であったり、接する人からの影響であったり、人によって様々ですが、現在からこの先も続いていくと思っていた道が、決して正解ではないと気付く瞬間なのです。勿論、夢が正解とは限りませんが、夢に近づこうとする過程で夢を見られるだけでも人生で得をするのです。

 結果は終わってみないと分かりませんが、結果で満足を得られることも夢の過程で満足を得られることも人生においては大切なことです。結果の満足は現在の延長線上にあるのか方向転換した方が得られるのか分かりませんから、気付いた時から自分の描く夢を目的にする方が満足感は得られます。

 人生の分岐点は思わない時に、思わない出来事から始まります。そこで踏み出す勇気を持って行動に移すことでこれから歩く方向は変わります。気をつけることは、躊躇していると現状が夢を侵食していくことです。躊躇していると思ったら、自らが夢を追い掛けていて、背中を押してくれる人を見つけることです。その人が決断を促してくれます。

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