494.協奏
 ある企業のトップは、「一時期、成果主義と言われ個人の成果が重視された時代がありましたが、現在ではチームワークが重視されるようになっています。一人がチーム(部や課)全体のことを考え、チームはそのひとりを支える、それが会社の業績につながるのです」と話しました。
 その通りだと考えます。日本型経営が時代遅れのよう烙印を押された時期があり、企業はアングロサクソン型の個人主義に走りましたが、決してそれが企業にとっても従業員にとっても全体の幸福につながらないことが分かり、今は揺り戻しが来ています。

 個人の能力が最大限に発揮でき、組織の中においてやりがいを感じるためには、個人をチームのメンバーが支えることが不可欠です。余程のことがない限り、チームであげる成果は個人の成果を上回るのです。
 このように時代によって価値観は変化します。しかも現代は比較的短期間で価値観は変化しています。ですから現役世代にとっては、やりがいがある楽しい時代なのです。

 少し前までは、社会は動かしがたい存在であると思っていましたが、実はそうではないと思っています。
 今は、社会を高いところから見る視点を持つことが出来るなら、社会は個人の行動によって動かすことが可能だと信じています。それどころか、社会を動かしているのは絶対的に個人なのです。自分が社会を動かしていないのであれば、どこかの誰かが今の社会を動かしているのです。そしてこれからの社会を動かすのも、今現在、地球上に存在しているどこかの誰かです。社会を動かせると信じて行動している誰かが、社会を動かすのだと思います。

 今の社会が固定されているものだと思っていると、何も変化させることは敵いません。実行すべきことは必ず出来ると信じることが、全てを可能にしてくれます。信じることで、それに必要な人やモノが集まってくるから不思議です。そんなことはないと思っているのであれば、自分がそれを出来ると信じていないからです。私達が知っている今が全てではなく、視点と行動を高い所に飛んで行かせたら、自分の下から社会は変化して行きます。
 Believing is just the beginning(信じることこそ、すべての始まり)なのです。

 世界をゼロサム社会だと思うから競争ではなく争いになるのです。限られた市場、限られた資源だからゼロサムゲームになるのですが、市場は拡大出来るものですし、資源も人の英知で拡大させることが出来る筈です。ですから他者を蹴落とすような争いではなくて、お互いが好敵手とも言える関係の世の中を築きたいものです。
 ただ同じ枠の中でいると、どうしても自分の領域を増やすために他者のことを考えなくなりますから、自分で今を突き抜けたいものです。同じ地域、同じ時間で存在しても、視点と行動が違うと、同じレベルでの争いは無くなります。
 それが市場も資源も拡大させてくれる協奏であり協争なのです。

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