462.感覚と理論
 仕事を遂行するために規則はあります。会社などの組織においては、基準や規則に基づいて仕事を行うのですが、規則に縛られてばかりではお客さんの要望に応えられなくなっています。お客さんの商品やサービスに対する要求レベルが高くなっていることや、知識が豊富になっていることから、お客さんが満足するためにはお客さんが持っている以上の高い品質の回答を求めるからです。

 会社に問い合わせが来る場合、一般的な事項に関しては理解していると理解して応対する必要があります。そのため規定に沿った形でお客さんに回答すると、思いが食い違う場合があるのです。可能であればお客さんの要望には応えたいところですが、一方では公平、公正な応対の必要もあり、お客さんからの個別の案件には全面的に応えられない場合がほとんどです。

 そんな場合、お客さん対する回答に関して、組織内の判断は権限を有する人が行うことになります。案件にもよりますが、一般的には管理職である課長や部長が権限を有しています。回答の根拠となるのは当然のことですが社内の規準や規定です。その範疇に収まらない回答をする場合は、その根拠付けが必要となります。つまり。誰から、どこから突かれても問題にならないように理論武装する訳です。しかし理論武装すればする程、基準や規則に従う結果になることが多いのです。何故なら、基準や規則は個別の事情は考慮しないで、一般的なことには対応出来る範囲のものにしているからです。

 当初、想定していなかったような、時代と共に発生する個別具体的な案件に対応出来ない場合、権限者の判断は難しいのです。情報の把握、関係する情報の収集、他のお客さんへの影響などを調べることになりますが、最終的には経験と勘による判断も必要になることがあります。
 しかし権限者の感覚と勘だけに頼るのは危険ですから、お客さんと接している、または現場の担当者の意見を聞くことが重要です。直接お客さんと接している、そして現場感覚を持っている担当者の勘は大切です。それは数値化出来ないもので、一般化出来るような理論でもありません。あくまでも現場経験と勘から来るもので、表現し難い感覚なのです。

 しかも担当者によって感覚は違いますから、それらを総合して権限者が個別案件への応対方法について判断を下します。この場合、大切なのは、担当者の経験と勘に基づいた意見を受け入れることです。自分の感覚と違うから受け入れない態度であれば、いつか判断を誤ります。当該案件に対する感覚は、人によって全て違うのです。理論付け出来ないものは受け入れない、違う感覚を受け入れないのでは、社会の要請に応じられるように会社の器を大きくすることは出来ません。

 基準や規則に現場感覚や経験から来る勘、そしてお客さんの意見を取り入れ、それらを改善していくことが仕事なのです。チームで仕事をする意味はそこにあります。個人商店よりも会社組織が大きくなるのは、個人の判断が全てなのか、判断する材料を提供出来る人が複数いることによってチームとして判断するかの違いです。現場経験から来る感覚を信頼しない組織からはお客さんは逃げますし、組織としての成長もありません。少なくとも直接接することが出来る組織構成員を信頼し、意見を取り入れることが生きた組織であり、役割分担なのです。

 感覚だけでの判断では誤りもありますが、理論だけの判断ではお客さんに満足を提供出来ません。両方とも欠けてはいけないのです。

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