343.観光事業
 平成19年度、和歌山大学に観光学科が開設される予定です。その次には国立大学として初の観光学部開設を目指していますが、和歌浦や加太、そして白浜と那智勝浦、熊野古道などを観光資源にしている和歌山県にとって期待が高まります。
 ところが観光事業の社会的評価は、それ程高くないのが現実です。和歌山地域の観光業が人材募集を行っても関心を持ってくれないようですし、残念ながら飲食業の社会的地位は低いとお聞きしました。金融機関からの事業用に金融融資を受けようとしても、地域の会社で主業務が飲食業の場合は審査が厳しい事例も聞きました。

 その理由はいくつかあるのでしょうが、大きなところで考えると観光学が体系だった学問として和歌山の皆さんに認知されていないことが挙げられます。かつて福祉や情報も社会から評価されない時代がありました。福祉に人材が集まらない、情報産業とはどのようなものなのかむ形が分からないとされていたのが嘘のようです。しかし各地に○○福祉大学や、△△通信情報大学などが誕生したことから体系だった学問として認識されると共に、卒業生も社会に輩出されました。
 大学に学部があることは社会的な評価が高まります。和歌山大学観光学部が誕生し、和歌山県内外に観光学を学んだ卒業生を送り出すことで、観光事業で働こうとする人材が整います。直ぐにはレベルアップ出来ませんが、何年か経過すると観光学を学んだ人達が観光事業者として活躍している筈です。

 観光学がトップにくることで、事業の新しい枠組みが出来上がります。交通事業者、ホテル・旅館業、飲食業、医療関係者などが枠に入り、今までにない組み合わせの業態が出現する可能性があります。旅館と飲食、医療関係者が集まり、アロマを提供する旅館に宿泊し、地元で採れた自然食だけを活用した食事を提供してくれる飲食店で食事を行い、ストレスチェックと改善対策を具体的にアドバイスしてくれる体制が整うと、今までにない健康サービス産業が生まれます。
 交通事業者と医療関係者が組むことにより、空港や鉄道の駅でお客さんを迎えた後、バス車中で健康チェックを行うなど健康に関する実演をしながら観光目的地までお送りすることが出来ます。到着後はストレス改善ウォーキングなどのメニューに参加してもらうことで、より健康な体を取り戻して生活の拠点に帰ってもらうことが出来ます。

 観光学がトップに来ることで、新しい形態の事業を誕生させることが見えてきます。そして大学の学問として取り入れられることで人材が育ち、また社会的地位は上がり観光業界は活性化します。
 このように観光学部が開設されると、直接的な観光事業者だけに利点があるのではなく、他業種にも波及効果が期待出来ます。新しい動きがあると必ず、予期していなかった分野にまで波及があり、既存の事業者の活性化や新産業の創造、そして人材交流などが図れます。ひとつの波は次の波を作り、大きな波として私達の前に現れます。

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