342.現代組織
 現代の日本社会において民間事業者は、企業の生き残りをかけて専門分野と経営資源を活かせるその周辺事業への進出を含めて事業の多角化を図っています。組織の持つ資源の有効活用と収益確保として活性化のために必要な施策ですが、行き過ぎると問題が発生します。
 それは多角化しすぎた組織は何の仕事でも受け入れられる代わりに専門性がなくなり、当事者間で課題解決を図ることが出来なくなるからです。従来の組織では当該分野の仕事に関しては判断できる人が存在していたのですが、新しい形態の組織ではフラット化が進展し、一人では判断出来ない状況が生まれています。
 
 このような事例を思い浮かべると分かり易くなります。新規飲食店舗開店に伴い会員募集をするための広報戦略を検討した際に、いくつかの案が出されたとします。
 例えば、携帯電話による告知。割引券の発行。インターネットの作成と更新。各地でのイベントへの参画などが挙げられます。この場合、広告専門会社など組むのですが、専門性の有する広告会社であっても一人の担当、またはひとつの会社で対応しきれない状況となっています。携帯電話会社との協議。コンテンツ作成。イベントの仕掛けなど、実施案は細分化されていますから一つの組織では対応が難しいのです。これは現代においては、基本的に大きな組織では仕事をアウトソーシングしているからです。
 広告会社でも仕事に応じた専門性を高めるため社内でも別組織または別会社にしている場合がありますから、複数の人が関わる必要が発生します。人や組織が介在することにより仕事の処理速度は低下します。決裁者が多くなり速度が減速されること、これが組織のフラット型の問題点です。
 そこで現代の専門性が高く細分化された仕事においては、ある程度全体像を分かった人がトップにいて、専門家を上手く活用することが出来ることが仕事の速度を落とさない秘訣です。

 しかしここでも問題点が発生します。そのような対応能力を持った会社と仕事をするとコストがかかることです。コストをかけるけれども仕事の速度を高めると共に信用という安心を受け取るのか、コストを抑えるために速度を落としても良いから複数の組織と仕事を行うのか、最後は責任者の判断となります。
 ピラミッド型組織では時代の速度についていけませんが、フラット化しすぎても安心感に欠けます。適度に組み合わせた組織が理想なのでしょうが事業に応じて割合が異なりますから、いつの時代でもどの仕事においても、絶対正解という組織はありません。
 社会でも事業においても安心、安全にはお金がかかるものですから、リスク軽減作用を適度に組み入れた事業展開が、結果を出す速度を優先に考える現代組織でも必要かも知れません。

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