340.マニュアル
 マニュアル人間はいけないと言われることがあれますが、マニュアルでさえ読まない人が増えていることで仕事の質が低下している場合があります。初めての仕事をする場合には目的や仕事の方法が分からないため、まずマニュアルから入ります。一通り仕事内容を頭で理解しておかないと何をすれば良いのか分かりませんから、白紙の状態で先輩達に聞くのは失礼です。

 マニュアルはその仕事に携わった人達が仕事の目的と手順と記したものですから、初めてその仕事に携わる人にとっては最低限知っておくべきノウハウが詰まっています。つまり仕事をする場合にはまずマニュアル通りに進めてみて、経験を積んだ後にマニュアルを改善するか、自分流に仕事のやり方を変えたら良いのです。
 改善するためには仕事の経験を積む必要があります。それは、自分でやってみないと本質部分は分からないからです。仕事をする中から改善すべき事項が発見することが出来ますし、お客さんからの意見や要望、苦情などから学ぶことが出来ます。お客さんから同じような要求がある場合はマニュアルが間違っているか、制定時から時代が進展しているためマニュアルが時代の要望に合わなくなってしまっているのです。

 ですからマニュアル通りにしたら自分の個性が発揮出来ないとか、お客さんのために仕事をしているのだからマニュアル遵守は必要ないと言う意見を聞きますが誤りです。仕事はまず基本があって応用があります。基本的なお客さん対応が出来て、初めてお客さんから信頼され、お客さんに応じたサービスを付加すべきなのです。
 挨拶がいい加減であったり、初対面の人にいきなり自分流の応対をすると信頼されることはありませんから、マニュアル以前の問題と言えます。自分に応じた仕事の邪魔になるためにマニュアルが不要だと考えてはいけません。マニュアルが不要なのではなく、マニュアルが不要になる程、仕事に精通すべきなのです。

 あるファーストフード店での出来事です。
 組み合わせたセットメニューを注文すると景品が付いてくる商品がありました。ここで2個セットメニューを注文したところ「用意していた商品は5種類なのですが、その内3種類の景品が品切れとなっていて2種類だけ残っています」、そしてマニュアル通りに「どの景品にいたしましょうか」との問いがありました。同じ景品を二つ欲しいと言うお客さんは、余程のマニアでない限り余りいないような気がするのですが、まだ不快感はなく大丈夫でした。

 そこで「どちらも一つずつ付けて下さい」と答えると、「すみません。二種類は無理ですので同じものを二個にしていただけますか」との回答。
 意味が分からなかったので「どういう意味ですが」と確認したところ「景品はあと2種類しか残っていないため、一つずつお渡しすると両方が少なくなってしまうので、どちらかを2個にしてもらえませんか」という回答。
 これも意味が分からない返答です。多分、どちらかの景品の在庫が少なくなっていて、私に一つずつ渡すとなくなる恐れがあるのでしょう。景品が一種類だけになると、今後セットメニューの売り上げ落ちると判断しての返答だと推測出来ます。
 後の人だけがお客さんで目の前にいる私のことをお客さんと思っていないような回答だったので、「二種類あるから一つずつ下さいと言ったのです。同じものは二つ要りません」と答えました。
 その店員は店長に相談しますと一旦、店の奥に下がり店長を連れてきました。しかし狭い店内ですから、相談している内容が聞こえてきました。店長が「一種類しかないと言っておいて」と指示しているのです。 店員は店長をカウンターに連れてきて「もう一種類だけしか残っていないのです」と回答がありました。余りの馬鹿らしさに、これ以上話しても時間の無駄だと観念しました。
 このような対応をする店には二度と来ることはないと思いながら「それでは仕方ないですね」と答えました。

 後の利益を考えてもう注文してしまっている今いるお客さんのことを考えない対応、そしてマニュアル通りの応対。お客さんよりも利益を優先した人達が作成したマニュアルだと感じる出来事でした。
 マニュアルは仕事を覚えるためのものですから整備は必要です。そして使うのは人です。
 マニュアル以前も、マニュアル通りも仕事には不適格ですから、マニュアルを読んで自分のものにして、そこにお客さんの視点が欠けていれば改善する、またはお客さんの要望に応じてアレンジする能力が必要です。

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