339.議員報酬
 ある地方自治体の報酬審査委員と懇談する機会がありました。報酬審査委員とは、市長や市の三役、そして市議会議員の報酬の水準を検討し、その結果を市長に直接提言する委員会の委員のことです。そこで検討した内容から話を伺いました。

 日本全体の平成17年度の年間平均所得は440万円、和歌山県の実績では410万円となっています。和歌山県で働く人の所得は全国平均よりも少し低くなっています。この数字は平均ですから、所得が1,000万円の人もいれば200万円の人もいます。今、仮に年間所得1,000万円の人が1人と、200万円の人が3人いるとしたら、1,600万円を4人で除するため一人当たりの平均所得は400万円となります。1,000万円の人が1人に対して200万円の人が3人なのに平均値で見ると400万円になっているのです。
 ですから日本全国の働く人が年間440万円貰っている訳ではありません。実態を知るためには平均値を注意して使用する必要があります。
 では所得の高い低いを、ある程度均して働く人の平均所得の実態に即した数値に換算すると、年間平均所得は300万円となるそうです。働く人が得ている年間所得は約300万円と思っておくと実態に近いのです。

 そこで議員報酬です。ある市の場合、年間所得は約1,200万円となっています。この報酬額が高いのか安いのかの判断は難しいところです。報酬審査委員会の答申でも、そのことは判断していません。ただ、議員全員が同じ所得なのは今の時代、疑問が残ると提言しています。具体的には、本当に市民のために見える形で活動してくれている議員だったら2,000万円でも3,000万円でも支給したら良いのですが、活動の様子が見えない議員に対してはわが国の働く人の平均所得である300万円を支給すれば良いと言うものです。
 働いていない議員であっても生活する必要があるため平均的な報酬を支給すべきですが、それ以上獲得しようとすれば成果を示す必要性があると提言しています。

 もっと具体的に記すと、議員は全員、年間の報酬額は300万円とし、後は成果に応じて支給する方法に変更すべきであると提言しています。成果分は政務調査費として上積みすれば問題はないとするものです。政務調査費とは、議員が研修会に参加したり、書籍を購入したり、或いは活動に要する通信費やガソリン代などに対して支給されるものです。
 本当に活動をしている議員に対しては、証拠の残る政務調査費として活動や研修会参加費用などに必要な金額を支給する方法が望ましいとしています。活動の結果は議事録や出張調査報告書などの形として残るものですから、活動の有無で報酬額が異なることになります。

 議員の活動は分かりにくいとの指摘は多々あるように確かに分かりにくいものですが、現代の議員活動が有権者に分からないのは問題だと提言しています。見えない活動は有り得ないもので、活動した結果は形として残せるものです。そして形とした残す方法とは文書以外にありません。

 議員にその気があれば情報は発信出来るものですから、活動報告書やホームページなどで有権者に活動内容を示すべきだと言います。有権者に示せない口利きだけでは議員の仕事をしていると言えません。議員は有権者から本会議で発言することを託された存在ですから、本会議や委員会で意見を述べることが最大の仕事です。それを怠っていては仕事をしていないと言わざるを得ず、1,000万円を超える報酬は高いと判断できます。逆に課題を見出して提言活動を行っている議員に対して1,000万円の報酬は、低いと判断することも出来ます。
 議員の報酬は、議員活動の成果により配分されるべきだと言う新しい考え方も登場してきました。

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