207.公共
 民間企業でも、ある程度の規模に成長すると公益性が求められます。それは社会の公器である企業は地域社会から育てられることから必要なものです。どの様な形での社会貢献でも良いのですが、出来るなら企業の優位性が活かせる部分で貢献することが効果的です。食品会社なら防災対策として非常用食品を提供すること、あるいは非常時には供給体制を確約することなどが挙げられます。

 広告会社なら防災用のセンスの良い広告をまちに掲出することが考えられますし、製造工場であれば敷地を避難場所として活用することを行政と確認することもあり得ます。兎に角まず何が出来るのか実行しないと、何が協力出来て何が協力出来ないのかさえ分からないのです。アイデア段階を過ぎある程度の企画が出来たなら、次の段階として実行することが大切です。

 企画を元に上司や関係箇所と会議を重ねていても実現に向かいません。未だ取り組んでいない案件は現場で実証出来ていないこと、市場での評価も分からないことからやらないための理由は簡単につけられます。やらない判断は簡単ですが、現状維持で良いと考えると間違いなく後退につながります。

 公共に還元する意思を持って施策の経営判断を行なうと、きっと市場からの支援は得られます。例えば、景観に配慮し街並みが明るくて色彩が鮮やかでセンスが良い広告看板を取り付けるとすれば、楽しいまちにすることも可能です。行政指導が入った街中の看板は、景観に似合っていないものがありますし、見ても元気になるものではありません。ところが印刷技術が格段に進歩している現在において、昭和40年代の古い通達に基づく広告規制に準じて景観保護を訴えているところもあります。
 40年も前の通達を奉って団体や市民から提言があっても、通達に記されていることを盾にとって改善するでもなく、ひたすら遵守するのは如何なものでしょうか。日本人のセンス、流行、印刷技術の進歩による美観効果などを総合的に勘案した上で適切な判断することが責任ある仕事です。

 単に通達にあるから駄目だと門前払いをするのでは、意識も実務も横並び行政から脱皮していないもので自立した地方の実現は遠い夢となります。しかし他の地方自治体と違うこのまちだけの特長を活かそうと考え、法律ではないものを改善する熱意を持つならば、民間がある程度の公共部分を担う動きが出てきます。市場化の中生き残ってきた企業が持つ技術と人材、センス、スピードは地方自治体の経営センスを凌駕するものです。
 特にスピードの違いに温度差を感じます。自転車で走るのと自動車で走るのでは見える景色は明らかに違います。何でも早ければ良いものではありませんから、自転車と自動車を比較しても無意味です。でも自転車だけを持っているのと自転車と自動車を持っているのでは必要に応じて使い分けることが可能ですから選択肢は拡がります。
 スピードが必要な案件に対しては自動車を運転するがごとく取り組むことで物事を早く改善することが出来ます。そして一度でもスピード感のある仕事を行なう経験を持つことでスピード感覚が養えます。晴天でも雨でも雪でも台風でも自転車だけを利用するような施策では遅すぎます。状況に応じた対策とスピードを持つことが必要です。

 和歌山市で市民に安心を提供することが行政サービスのひとつですが、地方自治体が民間の技術と協調することでスピード感を持ってやり遂げることが可能です。
 前例がない、通達がある、他の地域とのバランスが必要、予算がない、などの理由をつけていては、全ての条件が揃うことはありませんから永遠に施策が実現出来なくなります。
これを打ち破るのは関わる方達の熱意だけですから、チームメンバー構成が最も大切な要素です。会合の成否は、熱意を感じ前向きに進む感触を得られるかです。

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