126.価値観の転換
 現代社会は間違いなく女性の時代が到来しています。戦後をリードしてきた男性社会との違いが現れてきていますが、それは日本にとって良い兆しです。男性社会では、悪いことを悪いと言わなかった、或いは言えない空気がありました。むしろ、法を上手く破ることが実力者だと評価されていました。
 女性社会ではこれと逆の価値観を持ちます。母親は毎日子どもの事を考えるので安心を第一とするため日々の出来事に100%を求めます。現実の社会では考えにくい100%の安全と安心を判断の基本とするため違法行為は通用しません。日本が暴走するのに歯止めをかけているのが女性だという考え方です。
 これに対して男性社会では、10年先を見越して物事を進めるため対象の不安要素があっても前に進めますから、根本的に発想を転換する必要があります。

 男性は会社の中で生きているため、経営者によって価値観を左右されます。その価値観は特定の会社だけで通用しても社会では通用しないものです。狭められた価値観は社会の変化に対応出来ません。社会は変化しているのに会社の変化速度が遅いため、会社での不祥事が多発しています。
 女性、特に母親は子どもと孫と接する機会が多く、世代と共に成長していきます。その結果、世代を超えて通用する価値観を有することになりますから、価値観は決定的に異なります。
 価値観が異なる社会が到来しているのですから、今までの発想では通用しないことが分かります。都市部では既に新しい世紀に入っていますが、地方に行くと未だ過渡期で古い体質から脱却しきれていないため発展を阻害しています。女性の社会進出が進んでいるところから景気低迷から抜け出していて、女性が活躍していない地域は低迷を続けています。
 経済的特性や地理的条件ではなく、新しい社会の価値観から地域経済を観察するとこうなります。

 もうひとつ面白い視点があります。インフレを抑えているのは女性だという説です。買い物をする女性は広告やチラシで小売店の価格を比較して、距離が遠くても10円でも安い店に向かいます。同じ商品なら安いものを購入する消費性向が価格の安定につながり、インフレを抑えていると言うものです。これに対する論拠は見たことがないため推測の域ですが、女性の買い物が社会の安定につながっているかも知れないという仮説です。
 このように視点を変えると価値観が変わります。
 
 同じ視点で和歌山県を見ます。東京から来たジャーナリストから、和歌山県の特長はと聞かれたので、今年登録された高野・熊野の世界文化遺産があることですと答えました。 
 では和歌山市の特長はと聞かれたら、答えに窮しました。自然、福祉の充実、NPO活動などが挙げられますが、強いて和歌山市だけの特長ではありません。例えば、自然の中での健康サービス産業や、プロ野球独立リーグが地域主導で発足している、虐待や社会的ひきこもりに対応するための教育施設を関西で始めて設立した、ペットと一緒に公共施設や公共交通に乗り入れ出来る、などがあれば特長になりますが、ここだけの他都市に自慢できる一品がありません。

 世界を巡ってきた経験を持つ東京のジャーナリストからすると、和歌山市の様に温帯に位置していて自然環境が整っている都市は他に無いと言うのです。四季折々の恵みがあるだけで価値があり、四季を通じてマウンテンウオッチングが出来る環境は守るべきものだと言います。
 仮の話ですが、日本の49都道府県をバラバラにして世界の国に売却するとすれば、どの都道府県が最も高く売れるかと質問がありました。答え。一番高く売れるのが和歌山県、二番目は岩手県が正解です。その理由は、人口密度が低く人工のものが少ないことです。
 つまり世界から見れば、自然が残されていることに価値があるとされているのです。サミットにおいても、経済よりも環境を重視する時代であることを認識すべきです。
 それにしてもこの評価は和歌山県全体を指してのものですから、和歌山市の特長を一言で表すと何になるのか、良い解答を示したいものです。

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