124.陰山秀男先生
 広島県尾道市立土堂小学校に陰山秀男校長先生がいます。学ぶ力と生きる力を身につけさせるための実践をしています。

 学校教育の問題点
・その1現場を知らないこと。
 出生率は1.29と過去最低の数字となっていて近い将来は見通せる情況ですが、その現状を認識されていません。それはトップがけ現場を知らないことが原因です。企業でも日産のゴーン社長、松下電器産業の松下氏、ホンダの本田氏は、トップが常に現場に入り状況を知ることで方針を示していました。トップが現場を知ることで正しい方向性が定められます。
 教育現場ではそうなっていないのが現実です。教育委員会や首長が学校現場に入らないので公教育の現実を把握していないのです。一例として中学校の地理の学習ではヨーロッパの国のことを一カ国だけしか教えていません。ある教科書ではフランスを取り上げています。その書き出しは次のようなものです。「アキラくんはカマンベールチーズを食べてフランスに興味を持ちました」これが教科書の書き出しですから驚きます。
 
・その2問題に対して批判を恐れていること。
 理科の教科書ではフレミングの法則の記述がありません。これは詰め込み教育の弊害が言われてゆとり教育としたことから暗記学習は追放されているからです。暗記学習が批判されるから、問題となった暗記学習を追放することで批判を避けようとする態度です。問題の核心に踏み込んでいないためこれでは問題は解決出来ません。

・その3結果として対処療法となっていること。
 批判されないために、ありとあらゆる暗記部分を無くしています。お互いの家庭は学校を、学校は教育委員会を批判していますが、批判を止めて伸ばすことを考えるべきです。

 学力低下が言われ始めたのは「分数ができない大学生」が出版された1999年6月です。著者は西村和雄京都大学教授ですから震源地は京都大学です。しかし京都大学の学生が勉強していない筈はなく、勉強をしているのに学力が低下している事実が問題だったのです。
 このような学力、体力、気力の低下が、子ども達の生きる力を低下させています。この3つの力の低下は昭和60年から始まっています。この当時の時代背景に問題が潜んでいます。
 安いテレビが発売されたことで、テレビが一人一台となり家族内でも個別化が図られ、深夜化につながりました。テレビゲームソフトのドラクエVが発売され380万本も売れました。当時の小学生は800万人でしたから、2つの家庭で1本購入されていた計算です。兄弟、姉妹がいることを勘案すると、家庭にはそれ以上の浸透度があったと推定出来ます。
 レンタルビデオがヒットしたのもこの頃で、私達の睡眠時間が低下していきました。公立学校が荒廃し、お受験が言われたのもこの頃です。
 出来る子どもとそうでない子どもの二極分化、ゲーム全盛、塾通い、睡眠時間の低下が特徴でしたが、教育に対する批判は受験競争だけに向かいました。そのために基礎学習が嫌われたのです。嫌われる反復学習により、考える力を司っている脳の前頭前野の鍛錬不足となりました。

 対処療法になっている弊害の事例があります。
 小学校では背筋テストを行っていません。最近の小学生は体力が低下しているため、背筋テストをするとぎっくり腰になる恐れがあるのです。そのため背筋テストを取り止めました。背筋テストは危ない→背筋力を測らない→背筋力の数値が分からない→社会問題にならない、という構図です。学校が生徒に怪我をさせると問題になりますが、実施しなければ問題は潜在化するため社会問題になりません。
 実はそのことが最大の問題なのですが、批判されないために当面隠しておこうとする体質があります。
 学習時間の低下も問題です。小学校6年生における主要4教科の学習時間は、1971年には3,941時間だったのが2002年では2,941時間となり、実に1,000時間も減少しています。

 学力低下を解決するためには、家庭と学校が連携する必要があります。家庭においては生活環境を変えることです。変えるべき項目は、テレビを見る時間を1日2時間以内に押さえること。早寝早起きを実施する。夜は9時台に寝て朝は6時台に起きることです。これらを実践することにより必ず学力は向上します。家庭環境を変えるための猶予は1年です。2年かけて変えようと思ったらもう駄目で、1年で家庭環境を変える覚悟が必要です。
 家庭環境を変えると、挨拶が大きな声で出来るようになります。挨拶が出来ると活発に遊び始めます。友達と遊ぶことでコミュニケーション能力が向上します。その結果、人間関係が安定するので不登校や精神面での問題は無くなります。
 脳は筋肉と同じで使えば使うほど鍛えられます。読み書き計算で脳のトレーニングを行うことで基礎学力がつきます。ゆるぎない基礎学力の上に立った教育を行うことで学力は向上します。
家庭環境改善と基礎学力向上のための脳のトレーニングが生きる力を高めてくれます。これは子どもだけの問題ではなく大人も同様です。学力、体力、気力を保つことは社会生活を営む上でも大切なことで、社会を活性化させるためには、大人も生きる力をもう一度身につけることが求められています。

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