122.突出とレベルアップ
 脳を鍛える話をしていると、記憶力を高めるためには将棋や囲碁、オセロが効果的だとの意見がありました。プロの棋士になると過去の対局の差し手を覚えていますし、一手を動かすたびに200通りの次の一手が頭に描かれるようです。羽生さんが7冠を達成した時は凄まじく、それまでの将棋と羽生さん以降の将棋の棋風は全く変わったそうです。天才的閃きのある羽生さんの登場で、今までの将棋の常識は過去のものとなりました。
 将棋好きの人が羽生さんの棋譜を再現して指したところ、予想もしない駒の動きをしていることに気づきました。相手もプロですから何手も先を読んでいますが、それ以上に将棋盤全体を鳥瞰して指していたのです。どれだけ手を読んでも防ぎようがなかったようで、当時の羽生さんに勝つためには、羽生さんがミスをしてくれるのを待つだけの状態でした。いかに羽生さんでも一手ミスをすると負けるのがプロの世界です。

 将棋界の常識を変えた羽生さんですが現在は3冠になっています。それは追従する棋士達が打倒羽生さんのためにその棋譜を研究し尽くし、対応出来るようになったためです。凄まじいばかりのプロの世界です。さすがの羽生さんでも、何時もそれを上回ることは出来なくなっているそうです。そればかりか次の世代が台等し、羽生さんを基にして更に創造力を発揮している状況です。
 総括します。一人の天才が登場すると、それ迄とそれ以降のスタイルを変えてしまいます。周囲は直ぐに対応出来ませんが、しばらくすると研究されてしまいます。どれだけ画期的なスタイルでも、それ以降はそれが常識となりますから新しい時代も長く続きません。
 それ以降は過去よりも一段レベルが上がったところでの争いになりますから、過去にしがみついている人や現状維持の人は再び舞台に上がれません。舞台に上がれるのは、新しく常識となった戦法の研究を行い、創造力を付加してそれを上回れる人だけです。

 私達は平均的にレベルアップしているのではなく、一人の突出した一人の出現やそれ迄の常識に拘束されない人の登場によって一段上のステージに移行しています。進歩した中での平等、公平を望むのであれば一段突き抜けた人を支え、どこまでも突き進んでもらって、後に続く私達を引っ張りあげてもらうことです。レベルが高くなると全体のパイが膨らみますから一人当たりの配分は増えます。
 どの分野でも突出しようとしている人の気配を感じています。それを低いレベルに合わさせようとするのではなく、現在の平均値ではなく、現在の最大値が将来の平均になるように支援すべきです。しかしながら現状維持は居心地が良いため突出しようとする人を妨害する行為も現れますが、突出しようとする一人を潰すことは、全体の将来を潰すことになります。その世界や域内でそんなことをしていては、周囲でも同様に突出した人は同時期に必ず出現しますから、足を引っ張り合う所は取り残されるだけです。

 地域の胎動や新しい息吹は支えて、早期育成したいものです。
 転勤で13年ぶりに和歌山市に帰ってきた人が言った一言「全然変わっていないなぁ」の言葉に反省すべきです。変わっていないは、遅れてしまっていることを表す言葉です。

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