120.複線型の勧め
 平成17年初初頭、大惨事のスマトラ沖地震に関しての報道が連日行われていますが、最も早く正確な情報は貿易ビジネス関連で流れています。やはりビジネスに関係するとストレートに損益につながりますから、早くて正確な情報が求められます。         
 私が知る情報程度なら、市場経済におけるビジネスの世界では取るに足らないものだと言えます。私のレベルからすれば、重要な情報だと言ってもプロからすると実はたいした事がないものが殆どですから、把握した情報は誤解のないように直ぐに必要な箇所に投げるのが基本的なスタンスとなります。持ったままでは陳腐化しますし、握っていては前に進まないからです。情報から価値を生み出すには活用しなくてはなりません。

 それなのに何故、人は知り得た情報をリリースしないのでしょうか。情報は鮮度が高いほど利用できますから、川上で情報を取れる立場にある所に人は集まります。情報を入手した人がそれを活用出来なくても、活用することで価値を生み出せる人は、その情報に対価を差し出します。対価とは経済的なものを指すのではなく、プライドや重要な立場にいることの確認など、社会的ポジションがあることに人は安定を求める内心の満足感を与えるものです。
 安定は幻想に過ぎないのですが、それでも人は安定と安心を求めます。情報をいち早く取れてどこに発信するかコントロール出来る立場にいることは、社会的地位の安定につながります。一度その席に座ると放したくなくなるのです。人が権力から逃げられなくなるのは、その点にあるのではないでしょうか。
 その魔力に捕まらない方法があります。自分のポジションを一つに集中するのではなく分散化させておくことです。権力を使える立場だけにいると、情報を得るために人は寄って来るために周囲が見えなくなります。月日と共に自分の実力とポジションを混同してしまい、砂上をどこまでも高く登ろうとすることになります。

 それを避けるために二つ以上のポジションにいることを勧めます。一方で社会の中枢にいるのであれば、もう一方でフラットに物事を見られる立場に所属することが理想です。 
 舞台に立つだけの人には舞台裏の苦労が分かりません。ですからNPO法人などの構成員になり社会の下支えを経験出来る立場にいることが必要になってきます。誰かがお膳立てをしてくれた舞台で演じるだけではなく、自分達で一から作ることで感覚のズレを修正出来るのです。複数を同時に進行させるのは精神力が要りますが、地に付いた活動をするには複線型人間は強さがあります。
 経営者とNPO構成員、自営業と公的役職、議員とNPO構成員などは、複線型の生き方として相性が良いのです。自分の判断で物事を進められる立場にある人は、NPO法人などの組織構成員になることで権限の弱い立場の苦労を体験出来ます。組織構成員ならNPO法人などを設立してトップになることで、リーダーの大変さが理解出来ます。

 関連する複数の事を同時進行させることで、時間は充実し生き方の幅も広がます。目的を持ち複数のことに取り組んで得られるものは、不利益よりも大きいことは保証します。

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