114.イメージは一瞬
 和歌山県星林高校出身のプロ野球選手に巨人小久保裕紀選手がいます。小久保選手は2002年春のオープン戦で右足靱帯を断絶し一年間を棒に振りました。そこから2004年に復活するまで困難を克服する過程で人間的に成長したと言います。
 小久保選手のモットーは「礼儀、感謝、努力」ですが、これは恩師である王監督の教えを受け継いだものです。新人時代から最後まで居残り練習をしていた姿勢は、チームの中心選手になっても変わりませんでした。その背中を見て若手は遅くまで練習を行うという新しいチームの伝統が生まれました。実力をつけることは当然ですが、気持ちの中に「礼儀、感謝、努力」がないと人間として大成しません。子ども達に指導をする時もこの精神を伝えています。
 怪我をして人間として学ぶことがあったと言います。それはリハビリを続けても成果が見えないので目標を見失ってしまうのですが、それでも復活を信じて見えないものを信じて努力をするということです。見えないものが大切なのですが、やった結果を確認出来ないと不安感が生じる上、継続の意思が弱まります。これが続けていく上で最大の敵として立ちはだかります。
 練習も同じことで、練習をしても例えば3日後に成果は現れません。一週間後、一ヵ月後でも現れないのです。成果が確認できるのは一年後、或いは数年後なのです。小さな努力を積み重ねる以外に成長する方法はありません。
 見えないものを信じて努力をすることを指して「一心に生きる」が座右の銘にしているそうです。良いことも悪いことも必然で、それは人生においてセッティングされているようなもので、節目となる時に何かを伝えてくれるために事件は起こります。それを良い方向で考えることで道を拓くことが出来ます。
 物事を良い方向に考えるために毎晩行っていることを披露してくれました。それは寝る前に一日を振り返り、その日の出来事でもっとも良かったことを思い出すのです。ホームランを打ったこと、仮に何もなくても道に綺麗な花を見つけたことも良いこととして思い浮かべます。このトレーニングは4年間続けているようで、今では寝る前には良いことだけが頭に浮かぶようになっています。
 イメージトレーニングの要諦は一瞬です。長く時間をかけてイメージを描いてもイメージとして定着しません。例えば、ホームランを打つ瞬間のフォロースルーを思い描くイメージです。実現したい瞬間を一瞬イメージしておき、忘れることで潜在的に定着させます。
 この時相手のことは考えないで、自分がどうありたいかをイメージします。相手によって変わることをイメージしても効果はありません。自分の姿をイメージしたら忘れて、今は何をすべきか行動に移すことです。

 イメージした夢を実現させるためには言葉に出すことです。小久保選手の場合は、小学校2年生から将来はプロ野球選手になると周囲に話していたそうです。周囲の反応は様々だったようですが、疑いようのない事実にすることで確信に変わります。自分の言葉に疑いを持たないことが大切です。
 自分の考えを人に話すことで反応がありますから、それで自分の考えや行為を確認することが可能です。経験を積んだらそれを言葉にすることが大切です。
 自分の経験したことを全て伝えたいと願っている小久保選手。プレッシャーのある立場でいられることに感謝をしているようでした。プレッシャーのかかる立場や場面を経験することで、人として一段高い次元に登ることが出来ます。

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