54.食文化
 どの世界にもプロと呼ぶにふさわしい方たちがいます。食の世界も例外ではありません。各地域で名のある店舗の経営者は、決して奢ることなく職の研究を続けています。
 同じ素材を使っても経営者や料理人の発想により出来上がりが違います。素材の味を引き出すことは勿論、見て味わうこと食を楽しむ雰囲気をつくることも大切な要素です。
 そのため、機会を見つけて大阪市内の一流の店舗に懐石料理を食べに出掛けます。安い料理をどれだけ食べても、安い店にどれだけ行っても、新しい発見がなく学ぶことは出来ないからです。一流のものや一理由の料理人と触れることが、向上のためにもっとも大切なことです。
 
 知らない人からは、道楽で食べに出掛けているように思われることがありますが、最低限研究熱心であることが店の維持向上の条件です。味わうことや器の使い方、盛り付け方など参考にして自分の店に取り入れます。素材や器の活かし方や見事な料理だと写真を撮ってまで研究するそうです。良い意味で技術を盗むことが大切なのです。
 優れた技術や取り組みでも最初は模倣から始まります。基本が出来た上でレベルの高いものを模倣し、自分の技術と感性の中に取り入れることで、今度は人から模倣されるほどの自分オリジナルの作品が出来上がります。
 
 今回訪れたお店では、懐石料理の配膳するコース表を配布してくれました。懐石料理は何が使われているかも大切ですが、次に何がでてくるのか期待性と、それに応えるだけの意外性が必要です。お客さんの期待以上のもの提供することが料理人の腕といえそうです。
 
 プロからの料理に関する解説を伺いながら箸を進めるのは楽しい経験です。食を楽しみながら知らない世界を同時に学ぶことが出来ます。異なる分野の方たちと食事をすると、普段とは異なる話題に花が咲きますから有意義な会合となります。
 
 最初に熊野古道を歩く時は、紀州語り部についてもらうとより深く歴史に触れることが出来ますし、知らない作家の美術品を鑑賞する時も解説してもらうと理解が深まります。  
 食べ物も同じことがいえそうです。プロの解説は、私たちが知らない世界を見させてくれます。

 食は生理的欲求を満たすだけのものではなく文化になっているのは周知の事実ですが、自分が食文化に触れることでそれが理解できました。テレビや雑誌では表面は分かってもその裏側に隠されている文化までは感じ取ることは出来ません。何事も自分で体験しないとその文化性までは分からないものです。

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