34.表現力と感受性
 西本智実さんという女性指揮者がいます。西本智実さんは2002年1月、ロシア・ボリショイ交響楽団ミレニウムの首席指揮者となり現在に至っています。
 クラシックを聴いて感じることは、音符のイメージを指揮者が音で表現していることです。だから同じ楽団でも指揮者が変わると音が変わります。指揮者の一振り一振りが絶妙の音色を奏でます。クラシックは絵画なら印象派に例えられます。作曲家や指揮者は感じたこと、伝えたいことをストレートに表現しています。
 鑑賞する人は、その情景を感じ取る必要があります。クラシックは、言葉がないだけに感性や創造力が求められます。音で情景を思い浮かべ、喜びや感謝、怒りや恐れなどを感じ取ります。日頃から、絵画や写真、音楽など芸術に親しんでおかないと指揮者の思いを感じ取れません。言葉を発しないものを感じ取るには、日頃から感性を磨いておく必要があります。

 西本智実さん指揮者を見ることが出来ました。男性指揮者の力強さとは少し趣の異なるソフトな力強さがありました。近くで見られたことと指揮者の表現力により、クラシックから情景の感じられる演奏となりました。
 何でもそうですが、人によって成果物は違います。同じ物を表現しても、人が違うと表わし方は異なります。表現力のあるものを投げられると、感動を持って受け取れます。
 コンサートに当たって西本さんは、楽譜から作曲家が伝えたいことを読み取ります。それを自分で消化し楽団を通じて表現することで、私たちにメッセージを送ってくれているのです。楽譜を読み取る能力や創造力は、常人の知るところではないのですが、指揮者は作曲家が表現したいことを音に託して今に伝えてくれます。西本さんのような優れた人がいるから、私たちは芸術を楽しむことが出来るのです。
 
 音楽はライブが一番です。CDやテレビで聴くのとはまったく別物です。臨場感や指揮者の表現力、拍手の音、会場では全てが感じ取れます。本物を見るということは、体験することでもあります。どれだけ本物と触れたかで、私たちの表現力や感性は違ってきます。
 これは、音楽だけではなくスポーツ観戦も同じです。プロボクシングやラグビーなどは、会場で見るのとテレビで見るのは同じものではありません。背中にゾクゾクする感覚や熱気は、観戦しないと味わえません。読書で学ぶことに加えて、本物を体験することで感性を高めることが出来ます。機会を見つけて芸術に触れたいものです。

 それにしても、仕事を終えてからでも、ゆっくりと間にあう時間にコンサートなどを鑑賞出来る施設や催しがあるまちは、うらやましいものです。満足度が高いまちは、文化があるまちだと考えますが如何でしょうか。余暇の過ごし方に選択肢の多いまちは、魅力のあるまちの条件です。

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