35.心理的時間
 押入れが無造作に積まれた写真で一杯になっていたので、ここ数年の写真の整理をしました。
様々な場面に出会い、そして過ぎ去っていることに気づきます。2004年そして元号では平成16年を迎えていますが、1990年代ですら遠い過去のものとなり、改めて長い年月が経過していることに驚きます。
 人に与えられた時間は平等ですが、歳を重ねる程、時間の経過が速く感じるのはどうしてでしょうか。
フランスの心理学者ポール・ジャネーは、年齢によって時間の経つ速さの違いを公式で表わしています。

 人の生涯の、ある時期における一定時間の心理的長さは、その人のそれ時までの生涯の長さの逆数に比例する。

 自分に当てはめると、40歳の今感じる時間の長さは、10歳時の4分の1になる計算です。既に、今年に入って4ヶ月経過しています。10歳の頃4ヶ月の長さを感じていたのが、今では1ヶ月程度の心理的時間であると言えます。
 10歳は小学校4年生当時ですから、冬休みが終わり三学期も終業式が済み、新5年生になって一週間のところです。確かに、授業は長く感じたし、何時になったら中学生になるのかと思っていたような気がします。10歳時の時間の長さとは、永遠に小学生時代が続くような錯覚すら覚えるような長さです。

 それと比較すると、今の時間の経過速度は確かに速い。今年に入ってもう4ヶ月経過していますが、公式のようにまだ1ヶ月過ぎた程度の感です。今でもそうですから、50歳、60歳となると、更に心理的時間速度は短くなりそうです。60歳の1年は、10歳の自分と比較するとわずか2ヶ月です。盆と正月が繰り返して訪れるような感じでしょうか。

 やりたいことをしないと与えられている時間は限られています。小学生の自分が、大人の自分に出した宿題を、命ある間にやり終えなくてはなりません。
 夏休みの宿題は、いつも8月も終わりに近づいた数日でやり終えていました。夏休みが終わっても長い二学期は始まりますから、やり直せる月日は十分ありました。
 人生は、やり直せる時間はそれほど豊富にありません。勿論、物事が上手く進まなくでも、何度でもやり直しは効きます。ただし、目標がないと時間は無駄に経過するだけです。誰も宿題を提出してくれませんから、自分で期限付きの目的を持つことが必要です。

 人生における様々な出来事は、一度経験していると、初めて遭遇するよりも対処しやすくなります。 人生は一度だけの舞台です。夏休みの宿題は、一度だけの人生において、宿題と期限の大切を知らせてくれる予行練習だったような気がします。

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