こんにちは。本日は、「海草・向陽創立110周年記念式典」にご臨席いただきまして、誠にありがとうございます。同窓会長であり記念事業実行委員長の片桐章浩です。
私が向陽高校に通っていたのは昭和の時代でした。夏は暑くて冬は寒い教室での授業の風景、生徒ホールでの懇談や同級生と交わした他愛もない話も覚えています。教科書はカラーのページはなくモノクロで、卒業アルバムもモノクロでした。
さて時代は令和に変わり、いまの向陽生の学びは、まさに未来そのものです。
先日、数学の先生に教科書を見せてもらって驚きました。教科書はカラーでQRコードがついていて、それを読み取ると、動画で授業の解説をしてくれるのです。
もし私の時代にこの教科書があれば……もっと勉強していたかも知れません。
数学の教科書をめくったところに「素数」の解説がありました。翌日、同級生に「素数って知っている」と尋ねたところ「何だったかな」と答えました。彼は理数科でしたが。
卒業した後に「素数」を忘れても、笑いのセンスは忘れない。これも、向陽の伝統かもしれません。
今、向陽で学んでいる在校生の姿を見て「私たちの時代よりも、知識も感性も豊かで、世界をしっかり見つめている」。そして「伝統とは、私たちの時代の知識よりも、三十年、四十年先の知識を受け取ることだ」と思いました。
伝統とは、古きを守ることではなく、未来を先取りして受け継ぐ力。在校生の皆さんこそ、本当の伝統の継承者です。時代の最先端の知を学び、それを未来へつなぐ——。
まさに進化する伝統です。
私が経験した伝統は、硬式野球部が21世紀枠で選抜甲子園に出場した春。勝利をつかみ、スタンドで校歌が甲子園の空に響いたとき、向陽の現在と伝統の凄さを全身で感じました。
また物理部が、二年連続してロボットコンテストで世界大会に出場したことも感動しました。グラウンドでも、実験室でも輝く向陽生。まさに、「文武両道」の精神が息づいています。
私自身、向陽高校の卒業生であることを、人生の誇りとしていますし、この学校で学び、育まれた価値観が、今の私を形作っています。
同窓会長として母校を訪ねる機会が増えましたが、今も校門をくぐるたびに、胸の奥から懐かしさが湧き上がります。卒業生なら誰もが感じる——あの瞬間がよみがえる、不思議な感覚です。
卒業生として、ここで感じることがあります。向陽高校の青空は、校舎で切り取られた姿に見えます。若い頃、広報の仕事をしていたので、ニューヨークからもパリからも、ローマやイスタンブール、そしてカイロからも青空を見上げましたが、向陽高校から見る青空は間違いなく世界一です。そんな環境で勉強ができていることを幸せに思って下さい。
そして今、在校性の皆さんがその伝統をしっかり受け継ぎ、さらに高めてくれています。
私たちが残した伝統なんて、たいしたものではなかったかもしれません。でも、いまの在校生が、それを高め、花を咲かせてくれている。それが、何よりも嬉しいことです。
東京にも同窓会支部があります。本日、岡田会長、この後講演してくれる藤田さんが来てくれていますが、東京支部総会では多くの卒業生が集まり、母校の話になると誰もが熱くなり校歌を歌っています。過ぎ去った日々に戻り、目頭が熱くなります。過ぎ去った日が眩しく感じますが、眩しいと思う日々は、多くの人にとって高校時代の日々だと思います。それほど、向陽の精神は、私たちの心に生き続けています。
今回の記念事業も、校長先生を始めとする教員の方々、多くの卒業生と地域の皆さまの支援に支えられました。校内を歩くと向陽高校第一期卒業生の記念植樹の碑や、卒業生が寄贈したベンチなどが設置されていました。記念式典準備の過程で、改めて、向陽高校がどれほど愛されているかを実感しました。
これからも向陽高校は、伝統と先進性を両輪に、次の時代を切り拓いていくことでしょう。
私たち卒業生も、母校の発展を誇りに思い、ずっと応援し続けていきます。
本日の創立110周年を共にお祝いできることを誇りに思います。ご清聴、ありがとうございました。
記念事業実行委員長 片桐章浩



