コラム
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2024/3/14
1902    和歌山県の観光資源

ある県の人から和歌山県に関するおもしろい話を聴きました。それは次のような話です。

「和歌山県は宝物がたくさんあるのに生かしていないばかりか、氣づいていないのかなと思うことがあります。熊野古道と高野山の世界遺産を持っていることは羨ましい限りです。白浜町にある国際空港とパンダは凄いです。

羽田空港から白浜町まで1時間で来ることができますから、首都圏からの観光地としては最高です。しかもここには上野動物園に行かないと見れないパンダがいます。

話題になっていることは他にもあります。ロケットの打ち上げからスタートするようですが、これからずっと打ち上げられるのですから、わが国で類を見ない観光資源です。

醤油や金山寺味噌、そしてレタスなど発祥の地の食材がありますし、歴史上の魅力的な偉人もいます。更に温泉と新鮮な食材がありますから、これで観光産業が低迷しているのであれば、観光PRのやり方が拙いのか自信を持って売り込んでいないかだと思います。私の住む県からすると『観光資源を生かしていないのはもったいない』と思いますし、『これだけのものがあるのに、和歌山県は何をしているのだろう』と思います」と言う話です。

他県の人が、和歌山県に関してこのような意見を伝えてくれているのです。観光資源を生かせていないのは、これらの観光地が県内の市町に点在していることから一日や二日で移動できないことや、観光地での案内者が少ないことから魅力を伝えきれていないことが考えられます。

和歌山県の観光地はエンターテインメントではないので、現地を訪ねるだけで感動することや驚きは少ないと思います。ミュージカルや劇場で舞台や音楽を鑑賞する場合、野球やサッカーなどのスポーツを競技場で観戦する場合は、多くのお客さんと一緒なのでライブの感動を味わえます。

ところが熊野古道や高野山は個人で訪れるところなので、他の人との感動の一体感はありませんし、歴史や由来を事前に学習しておかなければ感動を味わえません。もしモナリザやミロのヴィーナスを知らない人がいたとして、その人がルーブルで鑑賞しても作品を知っている人と比較すれば感動は少ないはずです。

和歌山県の観光地は、事前に学習しておかなければ感動を味わえないところが多いのです。事前学習が無理なら旅行会社のガイドさんや現地の語り部に案内してもらうなどしなければ、何が凄いのか分からないので感動はないと思います。

僕の経験からすると、永遠の都ローマでさえ、ガイドブックを見ながら観光地を巡るだけでは感動は少なかったのです。現地で出会ったバチカンの方に案内してもらって初めて、ローマの歴史を知り心から感動したのです。フィレンツェにあるウフィツィ美術館でも、アーティストや作品に関する知識がなければ感動はしなかったと思います。

事実、自分が知らないアーティストの作品は鑑賞することはなく、帰ってから美術書籍を見て美術館で観るべき作品の数々を知り「知らなかった。観ておけば良かった」と思ったことがあります。

つまり知らないことには感動しないのです。その作品やアーティストのことを知っておくこと、観光地の歴史や見所の解説を読んでおくことで、現地を訪れて感動できるのです。

これが自然信仰で世界遺産に登録された観光地や和歌山県の寺社仏閣、「記紀」に記された歴史と、人が創り上げた娯楽性のあるエンターテインメントとの違いです。

和歌山県の観光資源はエンターテインメントではないので、事前の知識や現地での案内があって感動体験につながるものなので、その生かし方が難しいのです。

和歌山県の観光の話を聴いて、以上のようなことを考えることになりました。