748.夢の世界
 小児病棟を訪れたこはありませんが、ここを訪れると人生観が変わるそうです。ある小児がんの子どもの話です。直接、その子どもと接した方からの話ですが感動的です。

 ある小児がんの子どもSくんが入院していました。とても優しい子どもで、同じ病室に入院していた子ども達にも親切に接していました。そのため周囲の大人はSくんのことが大好きでした。

 ところがSくんの病気が回復不能となり、最後の日が迫っていることを医師から聞いた両親は、ベッドで横になっているSくんに聞きました。「夢は何なの」と。

 S君の答えは「無理だと思うけれど大人になりたい」というものでした。「無理なことはないよ。夢は叶うから」と両親は答えたのですが、その夜、Sくんは帰らぬ人となりました。

 最後の言葉が「大人になりたい」という夢でした。

 私達大人は、当たり前のように毎日を生きています。苦しい、厳しい、辛いといいながらも生きていられるのです。小児がんで明日を生きられない子どもがいます。ですから今日を生きていることに感謝すべきなのです。小児がんの子どもにとって、大人の世界は夢の世界なのです。大人にとって平凡な大人の時間としての今日が、小児がんの子どもにすれば、夢の世界なのです。私たち大人はそんな夢の中で生きているのです。毎日が夢の中で暮らしているのです。毎日が夢の日々の連続なのです。

 そんな夢目の時間を過ごしているのですから、不平や不満を言っている場合ではないのです。誰も夢の世界では不満を言いません。夢の世界は楽しい日々の連続ですから、楽しくて笑顔なのです。

 大人の時間は夢の時間なのです。自分が思ったことを実現できる世界が夢の世界でないとしたら、どこに夢の世界があるのでしょうか。ディズニーランドは確かに夢の世界ですが、それ以上の夢の世界が私達の生きている今の時間、この場所なのです。

 私達大人は生きている中で狡賢くなっていきます。例えば結果が見えていることには力を出そうとはしなくなります。テニスで取れそうもないボールを追い掛けようとはしないものです。そんなことを言うと「とれないボールを追い掛けてどうなるの」と返されそうです。しかし姿勢として、結果が見えていると思っていることに取り組まないと、世の中を切り拓くことができないので楽しくないのです。

 走っても意味がない。笑っても意味がない。こんなことを言っていても何も始まりません。何も始まらないことを期待している人は少数派です。私達は何かを期待しているのですから、自分で期待感のあることに挑戦すべきなのです。結果が見えていることには取り組まないと考えてきた大人が、日本を楽しくない国に陥れてきたのです。

 何でも実現できる可能性のある世界に生きている。そんな日を生きていることに感謝しながら、毎日を笑顔で暮らせる大人でいたいものです。

 私達はいま、夢の世界で生きているのです。

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