670. 感謝
 Tさんの親せきの方と出会いました。「本当はもっと早く会いたかったのです」と握手を求めてくれました。有難い気持ちと態度に感謝しています。闘病中のTさんは、誰よりも毎日静かな闘いを繰り広げています。私がやっていることは、電話で話をすることと自宅を訪問して励ますこと位です。そして心でお祈りすること以外に、何もすることは出来ないことを歯痒く思っています。こんなことで良いのだろうかと思っていたところ、思いがけずTさんの親戚の方から感謝の言葉をいただきました。見えない行動が見えていたことに驚くと共に、気持ちが気持ちを呼んでくれることを再発見しました。

「これだけ長い期間、ずっと支援してくれていることに感謝しています。会って感謝の気持ちを伝えたかった」。

この一言が、このことに関して何よりも嬉しい言葉でした。一日一度でもこのような言葉に出会っていることが、ストレスか溜まらない要因かも知れません。
 感謝の言葉を発する。感謝の言葉をいただく。これが元気の素になります。
 
 もうお1人がIさんです。わざわざ出向いてくれました。「感謝の言葉を言いたくて来ました。仕事に就けたのも、自宅を守れたことも、本当に感謝しています。何もかも無くすところでした。まだ自立の途中ですが、きっとお返しをしたいと思っています」。何と素晴らしい言葉をいただいたことでしょう。
 Iさんはきっと大丈夫です。辛酸をなめましたが見事に克服しています。真面目な仕事ぶりから新しい雇用主からの信頼も厚くて、順調に所得を上げています。そんな折からの嬉しい知らせです。

 サービス業においては「お客さんからのありがとうの言葉が嬉しい」と良く聞きます。これは単に鸚鵡返し的な「ありがとう」の言葉が嬉しいのではなくて、自分が行った行為がお客さんの心に触れたことで返してくれる「ありがとう」の言葉が嬉しいのです。

 心からの「ありがとう」の言葉をいだたくためには、思いやる気持ちを持って時間と、場合によってはお金をそのことに費やすことが必要です。経済的には、動いた時間と使ったお金に対する経済的報酬はありませんから非効率な行動だと言えます。しかし価値観を変えて心の報酬をいただいているとすれば、それは心に積み立てられていきます。そのことが積み立てられると、心は益々綺麗になっていきます。さらに信頼という利息を受け取ることができます。

 感謝の言葉という元本と信頼という利息を得るには長い時間を要します。経済的な価値よりも大きな報酬です。感謝の気持ちを受け取るためには、自分が感謝の気持ちを誰かに伝えなければなりません。感謝の気持ちの貯金がある人が、他人に感謝することができるのです。

 感謝の言葉をいただくことから得られる満足感と達成感は、その一日を豊かにしてくれます。そんな一日の積み重なりが将来の豊な人生を導いてくれるのです。

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