599.32年間
 32年間に及ぶ期間、関西電力労働組合での活動を行い、その中でも25年間もの長きに亘って本部役員を行った川口清一さんが、平成20年度の本部大会をもって本部委員長を退任し、現在は連合大阪会長に専任しています。

 本部委員長を退任されたことを受けて、今までの活動のご苦労を労いするための会合が開催されました。32年間は、実に会社生活の大部分を組合活動に捧げてきたことを物語っています。本部役員としての活動は25年間ですが、これは周囲が後押ししてくれないと決して務められないほどの長い期間なのです。組合の役員はなりたいからなれるものではなくて、周囲から「この人なら任せて大丈夫だ」と思って推薦してもらわないとなれないのです。そして民意に基づくものや組織構成員から選ばれるからこそ、代表として思い切って活動することができるのです。

 ところで活動の歴史は、事実としての冊子や交渉議事録などの記録として残っているだけで、誰が役員をしていても変わらないように思えますが、昔から川口会長を知っている先輩方の挨拶を伺うと、決してそうではなかったことが分かります。
 時間と共に歴史は作られますが、誰が関わるかによって歴史は全く違ってしまうものなのです。夜通し眉間にしわを寄せて考え抜いて出した結論。朝一番の会合で意見を述べて速攻で解決した案件など、リーダーの決断が組織の決断となりますから、その責任感と精神力は相当な重圧だったと推察できます。それは二つの選択肢または複数の選択肢が示された場合、議論を尽くすにしても最終的に決定するのはリーダーだからです。

 しかし時には組織構成員の期待や希望に反する決断を迫られる場合もあります。期待が大きいほど厳しい意見や批判に曝されることになりますが、リーダーの心を知らない私達は、短期的には損をしても将来的には得るものが大きかったことを、結果が示された後で知ることになります。
 トップに立つと後のポジションはないのは、その人を凄まじいまでの重圧から解放するためでもあるような気がします。

 今日の挨拶はふたつに分類出来ました。
 ひとつは、川口会長のこれまでの活動を振り返り、後に続く人達に功績を分からせるもの。もうひとつは、これからの新しい活動を支援するために必要なものを私達に分からせるものです。

 最終的に決断を下すのはトップだとしても、決断するまでの道筋を整えることと、決断できるだけの選択肢を整えることが組織の役割です。トップと周囲が信頼関係にあることが理想の組織なのです。
 過去の活動の歴史は輝く宝石箱ですし、これから歩く道は宝石を探す旅のようなものです。全力を尽くして未知の道を開拓してきた過去はいつも美しく、これから立ち向かう未来にはいつも透明感が漂っています。ですから過去を紹介する挨拶はどうしても賞賛となり、未来を期待する挨拶は行く道の厳しさを教えてくれるものになるのです。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ