561.安全を守る
 防衛に詳しいある経営者と懇談するために東大阪市に出掛けました。国防や安全保障、教育問題に関して意見交換を行いました。
 国を守ることは命を掛けるもので、生半可な気持ちでは国防は成り立たないのです。そのため自衛隊では三つのことを教えられ鍛えられます。

 一つ目は心の鍛錬です。どんな時でも動じない精神力と、どんな局面においても冷静な判断ができる精神力は全ての基本です。国を守ることは命を掛けることです。お金のために危険地帯へ志願することはあり得ません。国のため名誉のために命を掛けているのです。東ティモールやゴラン高原などへの自衛隊派遣に関しては、防衛省が指名するものではなく希望者を派遣しています。この派遣された半年間の歳費は自動車一台分程度ですから、それに命を掛ける訳はありません。あくまでも国際貢献、名誉のために危険な任務を希望しているのです。

 派遣先は非武装地帯といえども危険と隣り合わせです。強い精神力を持つ人だけが任務を遂行できます。この経営者が帰国した自衛隊員に会うと、派遣される前よりも目の輝きは増していたこと、自信に溢れていたことに気付きました。国の威信を掛けての任務に就くことは私達が体験できないような重圧ですし、それを成し遂げた人の精神力は何倍にも強くなっている筈です。心の鍛錬を行っている人は、そうでない人と比較して輝きを増しています。

 二つ目は技の鍛錬です。心が鍛えられた後は技です。危険への対応、とっさの行動の時には鍛えられた技が必要です。危険地帯の実践の場において、丸腰で相手に向かっていくことはできませんから、鍛えられた精神に加えて技の鍛錬が必要です。

 三つ目は体力です。優れた技を習得しても体力がなければ効果は発揮できません。精神力も体力と一致する関係にあります。極限では最後は体力の戦いになりますから、体力も鍛えることをしています。

 心と技、そして体力は、私達が社会生活を生きていく上で必要なものばかりです。国の安全を守り、国際貢献をするためには基本的なことを全て習得しておく必要があります。心が練れていない、技も体力もないようでは国際貢献することは不可能です。

 自衛隊の役割は災害救助と平和のための国際貢献活動です。これらのことは、誰もができる活動ではありません。報道されていない部分を自衛隊員が引き受けてくれています。災害救助の際は一番早く現場に駆けつけて、汚泥の中や瓦礫の下などに潜り込んで人命救助活動をしてくれています。報道される場面は災害が起きて時間が経過してからなので、自衛隊員の活動が報道されることは余りありません。一番危険で汚い箇所の活動を引き受けてくれていることを知る必要があります。何度も最も大変な箇所は現場です。現場で闘ってくれているのは誰なのか、どこの組織なのかを知ることで、安全確保に対する見方は変わる筈です。

 ところで、各駐屯地から現場に駆けつける体制を確立するために要する時間は約10分間だそうです。災害や非常時に備えて24時間、いつでも対応できる体制を確立してくれていることは、陰になって私達の日常生活の安全を確保してくれていることなのです。

 さて平成20年9月1日、防災の日に岸和田市において近畿の各府県が集まって、防災訓練が開催される予定です。国レベルの防災訓練が行われるものですが、これは関西地域での東南海・南海地震へ対応するための訓練機会となるようです。主催地のある大阪府では危機管理担当官として防衛省から人材を招いています。防衛省から人材を受け入れることで災害時の行動が違ってきます。具体的には電話一本で初期対応ができるのと、順序を追って対応しなければならないことの差です。その差はとてつもなく大きいものです。仕事は人です。人の能力と人脈に懸かっています。電話一本で行動が起こせることの意味は、非常時には際立ってきます。大阪府の対応をお伺いして、早速、担当官を紹介していただきました。

 即行動。これが全てです。思うことから始まりますが、思うだけでは実現できないこともあります。ところがやったことはやった結果が出ます。やったことは必ず結果が伴います。思いを実現させるためには、まず思うことは大事ですが、その後にやってみることはもっと大事です。

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