535.春の出来事
 春。新しい生活が始まる人達がいます。就職した人、転勤になった人、そして転職した人達がそうです。今までと違った環境に飛び込むのは勇気がいることです。人間は環境に適合するものですから、新しい職場環境よりも慣れた職場にいる方が気は安らぐのです。 慣れた職場に通勤することは精神的に安らぐものですが、そこに精神的に安住してしまうと、これからの成長が止まる危険性があります。

 春。新しく社会人になる人を見て、自分ももう一度、仕事を変えて新しい環境に飛び込もうと考える人もいます。前途が拡がる眩しい社会人一年生を見て、かつての自分を思い出すこともありますし、慣れた環境にいるとどうしても、これからの拡がりが感じられなくなりますから、思い切って夢に挑戦しようと思うことにも起因しています。ただ仕事をしている。そんな環境を断ち切って新しい環境に向かう。素晴らしいことですが、3月までの環境が4月になった途端に訪れるであろう大きな変化に、不安感を感じるのも当然のことです。自分で決めたことでも、いざ職場を変える段階になると不安感を感じるものです。

 3月初めの段階、つまり決心するまでに十分な期間があると内心は、『希望>不安』ですが、3月の終盤に差し掛かると『希望<不安』に逆転します。出来たら慣れた環境のまま居心地良く過ごしたいと思うようになるのです。
 人は未知のものを恐れる性質があります。人が深夜に不安を感じるのは、太古の昔、人がどう猛な動物に襲われる夜に恐怖を感じていた後遺症があると聞いたことがあります。人の遺伝子の記憶の中に見通しの良くない夜への不安が組み込まれているのかも知れません。この遺伝子の影響でしょうか、未知の世界に向かうことに対しても本能的に不安を感じるものです。これは誰でも挑戦することに対して感じる不安なのです。例え、好きな仕事が4月から待ち構えていると分かっていても、飛び込んでしまうまでは不安感を感じるものです。そして月日が近づくほどに不安感は増し、新しい職場に向かう前日の夜は最高潮に達します。

 しかしそれは自分が人生の主役を確かに生きていることの証拠なのです。自分が主役になるからその舞台での失敗は出来ないと思いますし、人から見られていることに対しての周囲からの圧力を感じるのです。

 主役でないと周囲からのプレッシャーは感じませんから、不安感を感じるのは主役を張っていることなので、その環境を楽しみたいものです。例があると分かり易いので記します。会社や学校の受験、資格試験では誰でも緊張します。議員の立場ですと、本会議で登壇する場合は緊張感が走ります。会社の命運を賭けたプレゼンテーションの場面は相当緊張するものです。全て自分が主役になっていることからプレッシャーを感じるものです。

 これに対して、当事者は凄い緊張感があると思いますが、自分では緊張しない場面があります。プロ野球開幕戦に指名された投手や世界タイトルマッチに挑戦するボクシング選手。将棋の名人戦の当事者となる棋士や日本ダービーの有力馬に騎乗するジョッキーなどは、私達の予想を超えるプレッシャーと戦っている筈です。しかし見ている私達にとって緊張感はそれ程ありません。理由は簡単で、その場面では自分が主役ではないからです。

 春。新しく迎える環境に緊張感やプレッシャーを感じるのは自分が主役だからです。プレッシャーから逃げてそれを楽しまないのは人生を楽しまないことです。不安だけれどもそこに立ち向かうことでプレッシャーはプレジャーに変わります。自分で行動を起こしたことによって襲ってくるプレッシャーは、自分が人生の主役であることを感じる絶好の機会です。それを楽しむことが人生を楽しむことなのです。

 そして今日、ある方は小学校の先生になることが決定し、新しい環境に飛び出すことになりました。素晴らしい出来事です。経験がないため最初は苦労の連続でしょうが、苦労の先に夢の実現が待っています。

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