511.奇跡の演出
 和歌山大学の小田学長と懇談。懇談のテーマは観光学部の地域での役割と今後の可能性についてです。これは和歌山大学観光学部の開学が間近になって来たことから懇談の機会を設けたものです。通常の推薦入学の倍率は3倍程度なのですが、観光学部の倍率は7倍を超えるなど人気学部になっています。しかも全国から希望者があるなど観光学の底力と可能性を感じます。観光立県和歌山県の学問の集積地としての和歌山大学の役割は増大しているのです。

 さて旧国立大学で観光学部の開学は和歌山大学が全国で最初となります。構想からわずか4年で実現出来たのは小田学長のリーダーシップによるところが大きいのですが、学長の言葉を借りると「奇跡に近い出来事」なのです。何故なら、旧国立大学で新学部の設置は認められにくい状況ですし、まして入学定員増と教員の増員が図れることは皆無に近いことですから、これらの問題をクリアした和歌山大学観光学部の開設は奇跡的だと言えます。小田学長は自らをツキがあると表現してくれましたが、ツキは人生において大切な要素です。ツキのある人は思いを実現させて行きますが、それはツキがあるからではなくて行動するから道が切り拓かれて、結果ツキがあるように思うのです。ツキとは行動力と同義語だと思います。

 観光学部開設構想から4年で実現しました。新学部の開設は困難な状況でしたが、可能性があると感じたので行動を起こしたのです。大学の力、地域からの支援、そして県民の皆さんの署名活動などが重なり合って文部科学省を動かし、実現に向かわせる力となったのです。地域の総力で観光学部を実現させたのです。ところが開設が決定してから、後の進行は大学任せの部分があり、新学部の実現に向かっていた頃の地域の熱意と支援体制が少し弱まっているようです。しかし和歌山県と大学のある和歌山市にとって千載一遇の機会で、観光学部を核とした施策考案と周囲の支援に本気で取り組む時期なのです。

 観光学部の価値を最も感じなければならないのが和歌山市なのですが、その価値に気付いていない感があります。東京では、和歌山大学に観光学部が開設なることに対しての評価は相当なものです。地方大学で新学部が開設なること、そして観光学を学べる場所として最適な場所であることに、観光学の先進的役割を担うことの期待感があるのです。今日もテレビ収録が入っていたように全国レベルで注目が集まっているのです。

 今春、昨年入学の観光学科の学生は二回生になりますし、これから専門科目の演習に入ります。そして彼ら、彼女たちが卒業する二年後や四年後の進路によって観光学部の評価がされますから、学問の充実度と地域としての本気度と熱意が試されるのです。

 小田学長が道をつけた観光学部がこれから進展を迎える時期に入ります。大学も実力を試されますが、観光立県和歌山県としての地域力が試されるのです。
 大学の役割は次世代の育成と研究による知識の集積にありますが、地域にある大学にとって地域活性化の一役を担うことも重視されつつあります。京都大学では地域の方も利用できるレストランが設けられています。学生だけではなく校外からのお客さんで満員になるようです。京都大学のブランド力もありますが、大学の持つ知的と品格の好イメージが人を集められるブランドになっているのです。つまり大学のあるまち自体がブランドとなり、他とは違う学研都市となっています。調査結果は分かりませんが、大学の周辺の住宅地の相対的価値は高いのではないでしょうか。知的で若々しいイメージは飛躍する地域のブランド力を形成しています。

 そこに全国でも先を行く観光学部の開設ですから、地域の総力を挙げて学生に選択される学部にしたいものですし、そのことが和歌山県での四年間の生活の機会を提供することになるのです。この四年間の生活が新たに、生涯に亘る和歌山県のファンを作ることになるのです。

 そして何としても中心市街地に観光学部進出を果たして欲しいと要望し、可能性について協議しました。進出するなら短期決戦となります。今年意思決定を行うことが中心市街地進出の絶対条件です。今年意思決定出来なかったとすれば、もう中心市街地への進出はあり得ません。ですから私も、今、観光学部の中心市街地への進出の可能性を信じて実現に賭けています。今、行動を起こさないで実現させることはあり得ないことを知っているからです。
 奇跡は奇跡ではなく、関係者の取り組みが形になったものでした。これからの奇跡は地域が創り上げて行くものなのです。

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