481.観光学その2
 観光産業が求めている人材像について話を伺いました。でも観光産業が求めている人材とは、現代の日本の社会が求めている人材であることが分かります。

 ひとつ。環境に適合する力があること。環境に適合することは生き残るためにも必要なものです。強いものが生き残るのではなくて環境に適合したものが生き残るとは、生物の進化論で言われていることです。全ての環境に適合することは難しいことですから、ひとつだけでも環境に適合し環境変化に対応出来る能力を身につけたいものです。その能力とは、勉強している中で自分だけが感じられる、腑に落ちる力です。
 例えば楽器の演奏。絵を上手に書ける。文章を書く力。企画力。人に親切になれる気持ち。表現力など、どんな分野のものでも良いのです。腑に落ちる力は絶対的に自信を持てるものですから、持ち続け磨き続けたいものなのです。

 ふたつ。優れた人脈があること。情報は生きる上での大切な資源です。しかも生きた情報を得るためには人的ネットワークが最も大切です。マスコミ報道やインターネットでも最新のそして有効な情報を得ることは可能ですが、私達の生きている場所と範囲からすると、残念ながら大半は不必要な情報なのです。仕事上で、生活をする上で必要な情報は人から伝えられるものです。情報は人なりです。しかも信頼している人に対しては新鮮で役に立つ情報を提供しますが、そうでない場合は伝えることをしません。何故なら、基本的に情報は対価が必要なものですし、場合によっては情報を自分の外に出すことは危険を伴うからです。情報交換は頻繁に行われていますが、重要な情報を行き来させることが出来る人のつながりは最も大切な資源の一つです。

 みっつ。精神的にタフな人間であること。観光業界は変数の多い仕事ですから、気転が必要です。大雨になった場合の対応の仕方。乗るべき飛行機が遅れた場合の対応の仕方。旅行参加者が病気を罹ってしまった時の対応の仕方など、計画外のことが頻繁に起きるものです。むしろ計画通りに事が進む方が珍しいとも言えます。咄嗟の対応が出来る能力が求められますが、それでも全てのお客さんの要求を満たすことは出来ません。文句や批判に晒されることがありますが、それに負けない精神的タフさを持ち合わせたいものです。
 文句や批判に遭遇した時は、その場を静めた後で自分に向かってこう言いましょう。「良く頑張った結果だから。反省して次回も頑張ろう。」と。勿論、鏡に向かって、にっこり微笑んで自分に対して言うのは当然のことです。

 観光学とは現時点では未完成ですから、全ての分野から学び、知識を取り入れることから始められると思います。未完成だから駄目ではなく、未完成のものを仕上げるためには可能性のある全ての知識に接することが必要です。

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