469.コーヒー
 和歌山市内で商売をしているところの苦戦は止まりません。中心市街地だけの問題ではなく、どこの地域の商店も売り上げは厳しい様子があります。本日、お話したご主人さんは、年末で店を閉めることを検討しています。今日もこれらの店の前の通りは人通りがなく「休日だからですか」と伺うと、「いつもこんな状態なのですよ」と寂しい表情で答えてくれました。

 かつてこの通りは、買い物客で通行できないほどの人が溢れていたこともあったそうです。昔ながらの商店街は全て同じような状態になっていますが、残念ながら盛り返すだけの勢いはありません。
 チェーン店であれば、昔からある店舗が赤字でも郊外型の店舗で売り上げが出ると問題はないのですが、個人商店の場合、店のある場所が、人通りが途絶えた商店街になってしまうと死活問題となります。このお店では今年に入ってから、売り上げから仕入れと諸経費を差し引いた残りが店舗の賃貸費用よりも少なくなってしまう状態が続いているそうです。つまり店を開けていても赤字続きで、現在のような人通りであれば今後の黒字転換も見込めないのです。

 商品単価が何百円のものを扱っていても利益が出ないので、年末商戦の結果次第では年内限りとなりそうです。ただ11月末となっていますが、この通りでは年末に向けての盛り上がりは、例年以上に感じられないと感想を漏らしてくれました。
 周囲を見渡すと、シャッターを下ろしているお店があることが分かります。一度、店舗を閉めると再開させることは容易ではありませんから、何とか持ちこたえて欲しいところですが、毎月赤字では「寂しいから辞めないで」とは言っていられません。

 話をしている途中に温かいコーヒーを入れてくれました。「インスタントですけれど」と枕詞をつけてのものでしたが、味は気持ちによって変わるものです。40年以上に及ぶ長い年月、商売を継続してきたご主人の、そして今年で終わるかもしれないとの思いが込められたコーヒーですから、苦味と温かみのある味がしました。苦いコーヒーが似合うのは大人ですが、経験を重ねた人の人生の苦味が感じられました。

 ご主人さんは、私が市議会に挑戦する時に挨拶に伺った時の名刺、市議会時代の名刺、そして県議会に挑戦する時に訪問した時の名刺を全て大切に保存してくれていました。そして「県議会の名刺も頂戴出来ないか」と言葉をいただきました。ありがたいことです。
 もしかしたらこのお店での最後のコーヒーかと思うと。何気ない会話と忘れられない味になりそうです。
 私はまだミルク入りのコーヒーを好みますが、苦いコーヒーを美味いと思う時が来るのでしょうか。その年代にならないと分からない味と言うものはありそうです。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ