458.批判を批判
 最近はわが国でも比較広告が見られるようになって来ました。広告の中だけではなく営業現場ではもっと熾烈な争いが繰り広げられています。つまりマスコミを活用した広告以外の分野では、ライバル会社の製品の欠点を並べて自社製品の優れたところをお客さんに訴えているのです。お客さんにとって、その製品のプロの営業から話を聞くとそう思ってしまいます。それも営業テクニックのひとつだと思いますが、ライバル批判では良い結果を生み出さないような気がします。

 先日、ある新聞にオーディオメーカーのボーズ株式会社(BOSE)の記事が掲載されていました。創設者であり現会長Dr.アマー・G・ボーズ氏が1964年に設立した会社です。1977年に日本支社が設立されています。日本の市場を任された社長は、当初、他のメーカーのオーディオ機器の欠点を述べて営業もしていたのです。ところがDr.アマー・G・ボーズ氏から、「他社の批判は一切してはならない」と注意されたのです。
 自分の会社の製品に自信があれば、他社の製品の欠点を言う必要はないと言うものです。正にその通りで他社と比較して他社を陥れ、一部のお客さんに購入してもらったとしても、巨大な市場の評価は別物です。市場の評価は製品そのものですから、他社の製品は関係ありません。

 一部で他社製品に勝ったとしても、市場が評価してくれないと市場での伸びはありません。小さい地域で勝ったとしても意味はないのです。
 ですから所詮、批判は批判ですから、他社の製品に欠点があったとしても、そのことが自社の製品が優れている根拠にはならないのです。
 Dr.アマー・G・ボーズ氏の方針に納得した日本を任されている社長は、それ以降他社の批判をすることなく日本での市場を拡大し続けました。今ではBOSEのスピーカーは余りにも有名になっています。

 さて最近、地震が発生する可能性が高い地域において、家庭での大災害に対する備えが重視されています。しかし災害への備えに関する知識は少ないのが現状です。
 そこに付け込んで他社の批判を前面に出してお客さんのところに営業を行っている会社があるとの情報と提案資料を入手しました。お客さんに対して震災への備えを営業することは歓迎すべきことです。しかし競合相手の製品が災害に弱く、自社の製品が災害に強いと、一応根拠付けていますが、訴えて選んでもらおうとする姿勢は戴けません。

 災害への備えは、お客さんのためになるような提案をすべきです。何しろ生命と財産が掛かっているのですから。そのためにお客さんにとって最適な防災への備えを提案すべきなのですが、他社製品を批判し、全て自社製品での導入を勧める姿勢は疑問です。統一する方が防災上優れているのではなくて、最適な組み合わせがある分野だけに残念な気がします。

 生命や不動産などの財産に関わることは、何をおいてもまずお客さんの利益を優先すべきものです。ここに他のシステムや製品を批判しているようでは、市場から反発があると思います。
 小さな地域や市場では批判によって営業出来るかも知れませんが、大きな市場や世界を流れる情報の洗礼を浴びる製品群であれば、他社批判は通用しません。
 批判するよりは自社製品を磨き自信を持って勝負したいものです。人も同じで、他人の批判ではなく自分の実力で勝負したいものです。

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