429.時間の旅
 Sさんの告別式のお手伝いを行いました。Sさんは63歳の若さで突然お亡くなりになりました。少し体調を崩していたと聞いていましたが、先般、救急車で運ばれてそのまま病院でお亡くなりになったのです。少し前にお会いしたばかりなのに信じられない感じがあります。余りにも身近に人が突然に永久の旅路につくと混乱してしまいます。
 人の死に遭遇するといつも無常を味わいます。世の中は常に一定のものはあり得ないことを感じます。昨日まで元気に活動したり、充実した生活を過ごしていたのに、突然、その人にとっての時が止まるのです。それでも周囲の人の時は正確に秒を刻みますから、死の瞬間からその差は拡がるばかりです。共有していた時間を共有出来なくなる、当たり前のことがそうではなくなるのです。

 私たちにとって最も大切なものである時間、それは命のことなのかも知れません。例えば63歳の命イコール63年間の時間の積み重ねなのです。時間は何よりも大切だと言うのは、時間は限られた命と同義語だからです。
 昔から未来に向かって永遠に時を刻む時間の旅の途中、私達は命を乗車券として時間の旅に合流します。下車するまでの間、旅の演出をするのは命ある私たちです。 私たちの行動力によって旅の形は都度変わります。窓から同じ景色を見ながら安定した旅を行う人、景色も見ないで超特急で駆け抜ける人、乗り合わせた人達との会話を楽しみながら充実した旅をする人、そして列車の運転を行い自分の好きな道を走らせる人、など人によって様々です。

 どんな時間を過ごしてもその人限りのものです。他人の旅ではないのです。たった一度限りの旅ですから、途中下車は旅の終わりを意味します。二度目はありませんから、旅の途中で目的を見つけなければなりません。生きている限り時間の旅の主役は自分ですから、行程は自由自在になります。乗り込んだ直後は基本通りで良いとしても、早いか遅いかは別にして、途中で自分だけの旅に切り替える必要があります。最後に、良い時間旅行だったと言って下車したいものです。
 命のある限り、一番大切なものは時間であることが分かります。しかし持ち時間は分からないからやっかいです。この旅で必要なものは行動力と勇気、そして物事をやり遂げるためのお金です。それを揃えて楽しい充実した自分だけの作品に仕上げたいものです。

 さて時間は命と同じですから、それが最も大切であることが分かります。では物品はどうでしょうか。物品は主役である人がいなくなると、その価値は無くなります。主人公である人がいるから、その人が所有していた物品に価値があったのです。主人公がなくなった後に残された物品は、所有者がないものになってしまいます。命ある限り物品は大切ですが、どんな物品であっても永遠に価値のあるものにはなりません。
 それよりも生きている今の時間を大切にする方に価値があるのです。さぁ、私に残された時間も1日分減少しました。今と、残された、そして限られた時を何よりも大切に使いたいものです。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ