409.正月その2
 元気で正月を迎えられることを何よりも嬉しく思えます。暖かくて安らぎのある空気と会話、健康で正月を過ごせることに感謝する一日です。子どもが成長すると共に自分も年を重ね、そして両親もそれに応じて年を重ねています。一年が経過する速さを感じると共に、一年の大切さが年と共に強く感じるようになりました。

 10歳代や20歳代の一年はいつでも取戻しが可能なため、時間が有限で重要なものであることを意識することはありませんでした。21歳も22歳もそれ程変わらなかったのですが、40歳を過ぎると一年が重要になってきます。現役として活動可能な時間は狭まってきますし、何もしなかったり失敗をしたまま放置すれば、取り返すのが大変な時期でもあります。また道を見誤ると再度挑戦する時間は更に限られてきます。ですからこの時期の決断は、大胆にそして思い切りの良さが重要だと思います。どうしようか迷っている内に時間は過ぎ去ります。但し、人生の先輩や周囲の皆さんの意見を取り入れながら判断することは言うまでもないことです。

 人生を全て終えている訳ではありませんから主観であることを前提として、人生の峠に差し掛かり越えようとする時期が40歳代であるような気がします。この先、まだまだ何かが待ち受けているのでしょうが、人生の中で大きな可能性のある春と夏の季節は過去になっています。実りの秋に差し掛かり、今まで育ててもらった皆さんに果実をお返しする時期でもあります。何を以って皆さんに応えるのか、それがこれからの課題であることを意識しておく必要に迫られています。

 久し振りに元の自分の勉強部屋に入ると懐かしさが蘇ります。自分がまだ父母の子どもであった時代、30歳や40歳になっている自分を想像することは出来ませんでした。スキーにラケット、ステレオにLPレコードなどが部屋を飾っていました。今ではそれらの品々は勉強部屋からも、そして現在の部屋からも全て姿を消し去っています。

 考えて見ると、これらは単なる品物ではなくて、将来の希望に溢れた日々の証であったことが、今分かりました。年代と共に周囲にある物は違って来ますから、その時の宝物であっても、時間はその物自体の価値を消してくれます。時間の経過と共に価値を増すのは、知識や技術、そして見に付けたものと内面です。物に執着するよりも、自分を高めることに価値を持っておきたいものです。ですからお金は物に使うよりも人に使う方が、価値を引き出してくれると思います。40歳代はリターンがあるかどうか分かりませんが、自分を含めた人に投資する時代なのです。時代を拓くために、そして後輩達が続く道を開くための活動をすべき世代とも言えます。

 自分が過ごした部屋に戻ると、損得のない純粋な気持ちになれます。ここで芽生えた思いは大切にしたいと思います。
 10歳代だった自分が、45歳になった自分をこの部屋で見た時、一体どう思うのでしょうか。厳しい人生を良くやっていると思うのか、大した大人になっていないと思うのか、まだまだ夢に到達していないから頑張れと思うのか、こんな人生は歩きたくなかったと思うのか、それは分かりません。ただ思いもしなかった方向に来ていると思うのは確実ですし、人に優しく心は素直に、の思いは変わっていない点は評価してくれるように思います。

 そして70歳代に入っている父母の人生の偉大さも実感する日となりました。何もなかった戦後の時代と、未知の領域であった高度成長の時代を曲がることなく生き抜いたことは、素晴らしい功績です。これからの一年一年も、未知の領域を切り拓いて先輩として生き方を示して欲しいと願っています。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ