405.信頼とは
 地域に根ざした活動をしている先輩。行く先々で多大な信頼を得ていることが分かりました。
「素晴らしい活動をしてきたことが伺えますね」と尋ねたところ、「何十年と地域活動をしているのだから当然だよ。特別なことではないよ」とサラリと答えてくれました。
 しかし同じことを長年に亘って続けられること、しかも人を相手との付き合いを分け隔てなく出来ることは簡単ではありません。続けられること自体が非凡なことです。「あなたが言うのだからその通りです」と言ってもらえる関係は短期間で築けるものではありません。この一言には何十年の年月が積み重なっていることに気付きます。人を紹介してもらうとはこれから自分が築いていかなければならない信頼関係に要する時間を短縮することで、長年の信頼を借りていることに他なりません。

 人を紹介してもらうことは他人が得ている信頼の前借をしているようなものですから、引き継いだ限りは信頼を損なわない気配りが大切です。仮に自分の責任において信頼を壊すことになれば、今までの二人の信頼関係を壊すことになるからです。
 他人が人に自分を紹介してくれるのは、自分のことを信頼してくれているからです。人を紹介してくれるのはそれほど重いことですから、後の付き合いを慎重にしなければならないのです。基本は日ごろからの挨拶を行うこと、しかも自分が出過ぎることなく紹介者への気遣いを怠らないことです。井戸を掘った人への感謝の気持ちを忘れてはならないように、付き合いが続く限り紹介者に礼を尽くした形で信頼関係を継続させることが人付き合いです。
「○○さんに言われたら仕方ない」「○○さんの紹介だから信頼するから」などの言葉の背景に、その人の信頼が絶大であることを感じ取れます。

 人と人との信頼関係の間に新たに加えてもらえることは、既に築かれた信頼関係の中に入ることですから、絆をより大切にしたいものです。出会いから付き合いが始まり、信頼関係に発展します。そして信頼関係があるからこそ、また新しい信頼関係が拡がります。お互いが絆を大切にするのであれば、次々と新しい信頼関係は生まれます。
 ですから人を紹介してもらうことは大切ですが、そのつながり強固なものにして人とのつながりを更に拡げることはもっと重要なことです。良い連鎖に発展させることが紹介してくれた人への恩返しです。自分で信頼関係の輪を終わらせてしまうことは絶対に避けなくてはなりません。

 自分が起点となり、いくつも人の絆を築いて行くことで最初の人の評価は高まりますし、今度は自分を起点とした人のつながりが拡がります。人と人とのつながりと時間を軸とした信頼関係が交わることで強い関係が築けます。絆や信頼関係は、全て自分が起点になっていると言う意識を持って大切に扱いたいものです。
 信頼関係を他人から貰ったものだと考えているとそれは消滅します。他人から借りたもので大きくして返すべきものだと考えると、人間関係はいつまでも大切に輝きます。他人が大切にしているものを借りたとすれば、借りた時点よりも大きくして、そして価値を持たせて返すのが全ての基本です。

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