385.話を聞く
 管理職の仕事で大切なもの。要職に就任するためには仕事が出来るのは当たり前のことで、人を引っ張るためにはそれ以外の要素の方が大切です。重要な要素、それは人の話を親身になって聞いてあげることです。
 これは簡単なようですが簡単ではありません。それは、人の話を聞いてあげられる信頼を得られていることが前提ですから、多くの人から「あの人は信頼出来る」と思われていることが、話を聞く以前の問題として横たわっています。

 また話を聞くだけではなく、聞いた後どのように行動してくれるのか、的確なアドバイスをしてくれるのかが肝心です。9割方話を聞く姿勢を持ち、その内容の中から核心部分について回答を導いてくれるような応対が必要です。
 でも聞くことは難しいことでもあります。相手の望んでいることを的確に把握することや、聞くだけではなく同一心理に立って回答を示してあげることも必要だからです。多くの人は他人の話を聞くよりも自分で話すことの方が得意ですから、聞くことの出来る人の存在価値はあります。

 強さだけではリーダーになれません。周囲の人の意見を聞いて行動に変えてくれる人、意見に基づいて調整してくれる人、他人の意見を自分の中に取り入れてくれるだけの度量がある人、これらの聞く姿勢を持っている人が管理職に相応しい要素です。
 ややもすると、仕事に自信がある人は他人の意見を聞かないで、自分の考え方が絶対正しいと信じて突き進みます。それは否定しませんが、毎回同じ調子だと周囲からの信頼は得られませんし、やがて周囲から意見が上がらなくなってしまいます。上り調子の時はそれでも良いかも知れませんが、人は常に上り調子の人生を歩ける訳ではありません。山も谷もある人生を、どれだけフラット化させていくのかが課題ですが、その手段のひとつは他人の意見を聞いて自分の中に取り入れることです。

 多くの経験者、そして様々な経験を持った方の意見を聞くことは、自分のこれから歩く道幅を広く、安全にしてくれます。30cmの道を歩くよりも4mの道を歩く方が安全です。未経験のことは、高い崖の淵を歩くようなものですが、経験者の意見を聞いて未経験のことに挑戦するのは、平地を歩くような安全性を確保してくれる場合があります。

 自分が全て正しいと言い切ることは出来ません。それよりも人生経験のある人の、しかも多数の意見は正しいと思って聞く姿勢を持つこと。これが人生を挑戦的にしかも安全に歩くために大切なことです。

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