384.現場に宿るもの
 夏の全国高校野球選手権、甲子園で熱戦が繰り広げられています。平成18年も例年と同じように暑い夏ですが、甲子園からは暑さよりも清清しさを感じます。
 夏の甲子園と言えば、何と言っても開会式と閉会式に演奏される「栄冠は君に輝く」です。聞いている私達の日常生活にも元気を与えてくれますし、甲子園の感動を伝えてくれる名曲です。

 この曲が作成された時のエピソードを聞きました。歌詞は公募の中から選ばれたのですが、作曲を依頼された方はこの素晴らしい歌詞に曲をつけるに当たってイメージを得るため甲子園を訪れたそうです。甲子園のマウンドに立った瞬間、メロディが頭を過ぎり瞬く間に曲が完成したと言うのです。考えるまでもなく、勝手に歌詞に合わせたような曲が浮かんできたのが、今も私達が聞いている「栄冠は君に輝く」の歌なのです。
 一つの曲が、夏の甲子園の開会式には眩しい輝きを感じますし、閉会式には夏の終わりを感じさせてくれるのです。いくつもの表情を持ったこの曲は、甲子園のマウンドで生まれたことから現場の雰囲気を私達に伝えてくれるのです。

 コブクロの名曲「ここにしか咲かない花」も、夏の眩しい輝きと少し寂しさの残る過ぎ行く夏を感じさせてくれます。この曲は沖縄にある島を舞台にしたテレビドラマの主題歌だったのですが、ドラマの主題歌の依頼を受けたことでコブクロは、沖縄にある島を訪れたと聞きました。実際、ドラマの舞台に立つことで、人を感じ、風を感じ、島に咲く花を見て、この曲を完成させたことと思います。
 東京のビルにいては出来なかった曲ではないでしょうか。現場を訪れることが全てであることを考えさせられるエピソードです。

 そして平成18年8月、和歌山県を観光と健康サービス産業の拠点にするため、国の認定を請け和歌山県で進行中の「観光立県和歌山」計画。立教大学観光学部の岡本教授の調査隊が和歌山県に入ってくれました。和歌山県の主要な地を訪れると共に、和歌山県の各観光地で活躍している人物と会って懇談するなど、人との交流も図ってくれました。観光地を訪れるだけではなく、そこで観光によって和歌山県を再生させようとしている活動している人と意見交換することで、和歌山県の課題を感じ取ることも出来た調査となりました。
 立教大学から来てもらった調査隊と地元和歌山県のNPO法人が全行程を同じくして課題を洗い出し、観光で生き残る方法を見出していくことにしています。これも過去のデータや過去の調査結果を見ることなく、先入観を持たないで白紙の状態で現場に入ることで感じてもらえることがあったのです。観光立県和歌山の構想はここから始まります。

 全ては現場に宿っている。3つの事例を挙げて見解を付しましたが、成果を生み出すためには、現場を訪れてモノを言うことが何よりも重要なのです。現場に真実が眠っていますから、それを引き出して価値を見つけることで、地域の人も全国の人も優れた資源として認識されることになります。価値があることが分かることで後の時代にも引き継ぐことが出来ますし、守っていくことにもつながります。

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