379.ストーリー
 2006年夏の全英オープンゴルフ。自宅のテレビですか、最終ラウンドを7月23日の深夜過ぎまで観戦しました。少し観るつもりだったけれども、優勝したタイガー・ウッズ選手に引き込まれるように最後まで観てしまいました。
 既に周知の事実ですが、2006年5月タイガー選手の父親であるアール・ウッズさんが癌との闘病の末に亡くなり、その直後の6月、全米オープンゴルフではメジャー初の予選落ちとなりました。王者タイガー・ウッズ選手でさえ2ヶ月のブランクの影響は大きかったのです。

 そして迎えた7月の全英オープンでは、予選落ちのショックからわずか一ヶ月なのに、信じられない回復力で栄冠を自分のところに取り戻しました。
「喪失感から立ち上がることは勇気がいることだ」。タイガー・ウッズ選手の言葉ですが、父親を失くした喪失感から強い精神力で王者に返り咲きました。
 観ている人に生きる勇気と素晴らしさを与えてくれるのに十分な闘いでした。
 タイガー・ウッズ選手が素晴らしいのは、世界のトップに君臨している選手なのに父親の看病のためツアーを二ヶ月も離れたことです。人生の指導者でもあった大切な父親と過ごせる限りある日々は、大切なツアーでも比較にならない程さらに大切なものなのです。トップレベルの選手になると、一日練習を休むと勘や感触を取り戻すためには、休んだ何倍もの日が必要だと聞きます。まして、世界のトップの地位を維持するためには練習を一日も欠かせないことは本人が一番分かっている筈ですが、それよりも大切な人との日々を過ごすことを選択したのです。

 私達はややもすると仕事が最も大切だと思い込み、大切な人と過ごす時間を忘れがちになります。いつでも一緒にいられると思っているのですが実はそうではありません。ある程度の年齢を重ねると、年齢は加速度的に過ぎ去ることを実感出来ます。子どもである自分が、年を取るのが早く感じるのですから、両親はより一層、日々の過ぎ去る速さを実感している筈です。
 両親から独立して所帯を持つと日々の仕事に忙殺され、両親の元を訪れるのはお盆と正月位になってしまいます。一年に二回も実家に行くのだから、特段問題はないと思ってしまいますがそれは大きな誤りです。自分と両親年齢を考えると親子が会える時間は思っている以上に少ないのです。

 人がどれだけ生きられるのかは誰にも判りませんが、大雑把に平均年齢は男女の区別なく85歳位だとすると、75歳の両親を持つ子どもにとって両親と会える日々はわずかです。式で書くと驚くことに、年2回×10年間=20日となります。
 生きて会える日はわずか20日だけとなります。これが極端だと思う人がいたとしても、大切な人との時間がどれだけ貴重なものかは理解してもらえる筈です。

 毎日のように顔を合わせるのが普通だと思っていた学生時代、社会に出た後は、いつも子どもが道をはみ出さないように見守ってくれています。そして独立した後は、子どもの頃のように毎日会うことはなくなりますが、帰れる場所があることにいつも感謝しています。
 当然のことですが、仕事よりも大切なものがあるのです。
 それを失くしたタイガー・ウッズ選手が、自分を育ててくれた父親のためにも、喪失感から立ち直り元の場所に返り咲いたのは感激モノです。人が生きると言うことは、自分だけのストーリーを描いていくことです。

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