377.交錯
 人が生きる社会、どこで暮らそうともどんな人生であろうとも、そこには様々な思いが交錯しています。過去と現在、人は成長するにしたがって考え方や感じ方は変化しますから、同じ延長線上の人生を生きることは出来ません。どこかの地点で飛躍したり、少しずれが生じたりするものです。お金で生活の安定を図れませんし、仕事だけでも家庭の安定を図れません。
 ましてお金、仕事、家庭などの不確定要素が入り混じった人生ですから、安定を図るためには前向きに進む以外に手段はありません。自分と家庭、自分と仕事、自分と周囲の皆さんなど、二輪を安定させるためには両輪のバランスが大切です。それを生涯継続させる必要があるのですから生きることは大変です。

 人生の安定を継続させるために欠かせないものは経験と思い出です。
 積み重ねてきた経験と、人生を振り返った時に見ることが出来る道筋は、これからの人生の幹となりますから、この幹を真っ直ぐに太く育てたいものです。
 また幹の途中に見ることが出来る思い出という節も、幹を強くするために欠かせないものです。節となる思い出とは、自分で行動して結果残っているものを指します。海外経験、資格取得で苦労した経験、仲間とのサマーキャンプ、成功させた企画などが該当します。また小さい頃に育ったまちを訪れた時に感じる独特の香りは、純真な気持ちを取り戻させてくれます。

 卒業した小学校を訪れた時に思い出す担任の先生の顔と教えは、大人になった自分の基礎を作ってくれていることを感じさせてくれます。
 卒業した高校を訪れた時に感じる懐かしさは、困難に直面した状況から脱出させてくれた上、人生のスタートラインに再び立たせてくれます。
 経験と思い出が人生で欠かすことの出来ない、そして大切にすべき二大要素です。
 そしてその中で生まれるものは信頼出来る人との出会いです。何十年も会っていないのに、声を聴いた瞬間に思い出して昔に戻る経験があります。何か問題に直面した時には、かつての同僚や先輩などに相談することで問題が解決に向かうことがあります。

 それは気持ちを過去の輝いていた時点まで引き戻してくれることや、精神上で時計の針を戻してくれることによって、現在の生活環境から逃がしてくれる作用があるからです。一時的なものだとの意見がありますが、問題に立ち向かうためには、泣きたい気持ちでいるよりも笑顔を持って向かう方が良い結果が期待出来るのは確実です。
 困難に立ち向かう勇気を与えてくれる人が、今までの人生の中で存在していることは、何事にも変えがたい大きな財産です。

 人生という過去から未来に伸びる線に交差する数え切れない点があります。交差するのは一瞬だけかも知れませんがその形跡は残ります。そして、その一瞬だけ交わった点であってもその相手の人生もまた線ですから、いつか再び出会うことがあるのです。
 出会った人もまた大切な友人です。

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