356.マンション建設問題
 和歌山市内で大規模マンション建設計画がありますが、地元との話し合いの中で折り合いがつかないのが問題になっています。事業者側は当然のことですが、建築許可を得ているなど手続き面、法律面では何の問題も発生していません。ところが地域で生活されている方にとって生活面での問題が置き去りにされています。

 自治会から事業者に対して地域の一員として共存するため何項目かの要望書を提出していますが、誠意ある回答がないのが現状です。問題を挙げるだけでも、日照権の問題、電波障害の問題、風圧の問題、深夜の静寂の問題、高層マンションが地元の家屋を見下ろすために発生するプライバシー権の問題、家庭用ごみの問題、駐車の問題などがあります。
 これらについて地元の要望を聞き届けて欲しいところですが、事業者にとっては不必要な経費をかけたくないのでハード面での対応はしてくれないようです。また完成後、事業者は引き上げますしマンション管理者も和歌山県外なので、何か問題が発生した場合の対応も困難な状況となっています。これらの問題を解決するために行政機関の力と知恵を借りています。

 ただ行政機関は法律に基づいて行政に関わる業務を遂行すること、法律に基づいた判断により許認可を行うことが仕事ですから、法的に問題がない案件に対しては地元の皆さんからの要望であっても手段がないのが現実です。
 ましてこのマンションに対して建築許可が下りている状況にあっては、計画を阻止することは難しいところです。
 せめて地元の皆さんの要望に対する回答内容の不満に関して、事業者に指導して欲しいところです。

 同じような地元とマンション事業者との間の問題を、比べようもない程抱えている横浜市では、「マンション建設トラブルでは、地域住民のエゴも少なくないが、業者の建設にかかわる情報公開と説明がなされていないケースも多く、中田(横浜市長)が言うように業者のモラルに大きな原因がある場合が多く見受けられる。違法性はないがマナーを無視している業者にどう歯止めをかけるかに、真の意味での問題解決の成否が(*1)」あると捉えています。

 社会秩序維持のために法律を守るのは当然のことですが、後から来た事業者が平穏な地域にやって来て、突然マンション建設計画を示し、十分な話し合いをすることもなく手続きを進めてしまい、地元の要望に対して、法律の範囲内で建設するから問題はなく聴く必要はない態度をとることは問題です。
 法律の適用も重要ですが、市民の皆さんの生活を守ることも行政機関の役割です。両者の間で問題が発生すれば、仲裁をする役割もある筈です。地域における行政機関の役割が議論されている中、法律の枠内だから許可するのは仕方ないとする態度では皆さんからの支持を得られません。 

 和歌山市においても、高松地区、大田地区でも高層マンションに関して地元と事業者との間で同じような問題が発生しています。法律の範囲内だけれども同じような高層マンション問題が惹起している状況があることは、地域にとって何か問題があることを行政機関は敏感に感じ取る必要があります。
 中央から権限も予算も移譲されている中、単に法律を適用するだけの姿勢ではなく、同じような問題が発生すれば、国に対して問題提起していく姿勢を持って欲しいものです。

*1の出展『横浜改革中田市長1000日の闘い』、相川俊英著、ブックマン社、2005.4.11

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