336.年齢を重ねると
 定年まで後3年のある方は、57歳になると体力も気力も衰えてくると実感しているようです。体力面では夜遅くなった次の日の仕事がつらくなること、気力面では粘りがなくなり「もういいや」と思ってしまうことが多くなったと言います。あと少し粘ったらものになると経験から分かっていても、やり遂げられなかった時の会社への迷惑を考えたら、無理しなくても良いと考えるように気持ちに変化があるそうです。
 若い時代や中堅社員の時代には考えられなかった気持ちの変化に内心驚きながら「これが年を取るということか」と実感しています。人の気持ちは変わるものですし、誰にでも訪れる60歳を前にした季節での心情です。

 これは個人だけの責任ではなく社会的問題も影響しています。会社組織にいると経営者に入らない限りは60歳を迎えると有無を言わさずに定年となり、本体に残ることは難しくなります。勿論、再就職や関係会社への出向などの選択肢はありますが、なんとなく社会での自分の存在意義に疑問を感じると言います。
 会社があるからこそ、社員としての自分が社会で発言出来ていたことを実感する瞬間です。後ろ盾がなくなると精神的に踏ん張り切れない弱さを誰もが持っています。

 ある企業の所長は現役時代、社交性があり会合などで社外の友人を数多く作ってきました。会社の所長ではなく個人として付き合いをしてくれていると思っていたのです。ところが出向した次の年の新年1月1日、年賀状を楽しみにポストを見てみると今まで500枚は届いていた年賀状が100枚程に減少していたのです。間違いかなと思って昼前にポストを覗いても届いていませんでした。現役の人は年末忙しいから1月3日か4日になると残り方からの分が届くだろうと自分に言い聞かせたのですが、やはり現役時代とは違って年賀状は届かなかったそうです。この時、どれだけ頑張ってきても世間は所詮、会社の肩書きがある自分と付き合っていたことを知ったそうです。個人になった途端、今までの付き合いが失われたことに暫くショックを受けていましたが、気持ちを切り替えたそうです。

 それは今まで肩書きや付き合いに縛られないで、定年を迎えて出向したありのままの自分として、これから新しい付き合いを始めたら良いということです。その後、趣味やサークル活動、そして奥さんと一緒の会合にも出掛けるようになり、今では現役時代を知らない人との付き合いが多くなり新しい交流が広がっています。
 
 この方の場合、肩書きを離れて個人として社会と関わりを持てた事例です。このように気持ちの切り替えが出来る人は地域社会に入っても社会参画が進むのですが、いつまでも地位や肩書きに固執している人の社会参加は実現しません。
 団塊の世代が会社組織から離れる時期を迎えています。競争に勝ち残った人達の能力は素晴らしいものがありますから、その能力を地域社会で活かしてもらうためにも、会社を離れた地域活動に参画していただきたいと願っています。新しい出会いと活動がこれからの人生を飾ってくれる筈です。
 今日の方は、定年なっても社会との接点を持っていくよと話してくれました。前向きな方は気力が衰えたと言っても、衰えを感じながらも出来ることには取り組むというやはり前向きな姿勢を持っています。

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