321.意識から始まる
 日産自動車の志賀俊之COO(最高執行責任者)は和歌山市出身です。日産自動車はカルロス・ゴーン氏が再生させたことは有名ですが、大々的に体制を改革したのではなく、実際はゴーン氏がルノーから日産に来たのはわずか30人だったのです。それ以外の人は従来から日産に勤めている人ばかりだったことから、如何に人が意識の持ち方を変えることが組織を変えるのかが判ります。
 沈滞した組織や地域などを蘇らせる全ての要因は人にあります。所属する人の意識が組織を再生させるのです。

 1997年、日産自動車はおかしくなっていたのに従業員には実態を知らされず、その認識はありませんでした。ゴーン氏がやってきたのは1999年で、7月7日に始めて従業員を前にスピーチをした時から変革は始まりました。三ヶ月の現場視察と従業員との会話の中で見つけた答え「常に価値を創造していることを求める」ことを発信しました。
 同時に従業員に組織の5つの弱点を隠さずに知らせました。
 利益追求の不徹底。お客さま指向不足。機能横断、部門横断の不足。危機意識の欠如。全社共通の長期ビジョンの欠如、の5つの弱点です。

 このスピーチからわずか三ヶ月で日産リバイバルプラン(NRP)を策定したのです。機能横断型チーム(CFT、クロス・ファンクショナル・チーム)を設け、NRPの推進を図ろうとしたのですが、策定したNRPが再生に結びつく比率は5%で、残りの95%は実行出来るかどうかにかかっていると、従業員に呼びかけたのです。

 そして何が日産を変えたのか、三つの要因があります。
 強いリーダーが出現したこと。進むべき方向を示すビジョンを掲げたこと。モチベーションを高めたこと。これは、全ては一人ひとりの意欲から始まることを示したものです。
 これらの要因があったことが再生につながるのですが、組織にいる人は変わっていないことが注目です。組織内で埋もれている人材を探し抜擢し、より高い価値観を創造するために色々な意価値観を持つ人がぶつかり合う環境を作ったのです。焦点をお客さまに合わせること、その原動力は従業員の価値観にあります。
 これらの計画が成功したのは、日産の人材には謙虚さがあったことが挙げられます。トップがどれだけ完璧な計画を打ち出しても、過去の成功体験にしがみつくなど新しい考え方を信じない人が存在していると、トップが考えている計画通りには進みません。トップを信じて、新しい環境の中で能力を素直に発揮出来ることも大きな才能です。
 組織を変えるためには全てを入れ替える必要はありません。仕事を通じて社会に価値を創造している意識を持つだけで良いのです。
 全ては一人ひとりの意識から始まる(The power comes from inside)のです。

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