229.改革
 本当の国政や行政改革とは何なのでしょうか。改革の核心は、しがらみと利権、癒着と馴れ合いを絶つことです。民営化論議や小さな行政府、公共事業の見直しなどが言われていますが、実はこのことに尽きるのです。形を変えて議論されていますが、肝心なところに踏み込めない現状があります。

 郵便局にあるはずの郵便貯金など約340兆円は、道路公団や各種外郭団体の事業で活用されているので、成長期には効果や期待がありました。しかし民間事業ではないので競争原理が働かないため無駄な事業が浮き彫りにされ始めています。政府に預けたお金が利権で動いているのは私達の本意ではありません。適正な規模と金額で国益のために使用されるのが正当な使用方法です。

 元中央官僚の方の話を伺いました。中央官僚は国益を願って理想の政策を立案しますが、政府与党で捻じ曲げられてしまうのが現実だそうです。現在社会においては理想通り実現することは難しいのですが、微修正ではなく捻じ曲げられるのは問題です。捻じ曲げているのは族議員と呼ばれる方達で、それぞれに関係する法案が出されると登場してくるそうです。
 結局、中央官僚でいても思いが実現することは少ないと言います。折角日本国のために尽くそうと理想を描いて中央官庁に入庁しても、理想を持たないで利権集団に成り下がっている一部の政治家のために志は挫折する場合があります。
 その利権集団と族議員による連鎖を断ち切るのが本当の意味での改革です。2005年9月の選択は単に郵政民営化に賛成か反対かの議論ではないのです。郵政民営化賛成であっても、次の改革では反対に廻る議員もいる筈です。私達は自分の利権集団を守るためだけに行動する力を抑制するための行動を取るべきです。

 でもそれを見分けるのは難しいのです。一番簡単で効果的なのは、議員や候補者と話をすることです。今時点の活動の旬は、地方においては市民参加活動やNPOへの理解、教育問題などですから、それらに関する話し合いをすると地方議員の本質が分かります。市道を改修したとかガードレールを取り付けたなどの問題は地方議員の資質とは関係はありません。

 国政に関しては官業の民営化や年金、税制問題などについて話し合うと考え方は良く分かります。話し合いをしていても改革の機運は一気に拡がることはありませんが、大切な活動です。利権の維持か改革なのか、子どもや孫の世代のために考えて行動するターニングポイントになる時期が今だと言えます。国の借金とは何ですか。統計上のものなら返す必要はないのでは。
→国の借金とは国債の形で国民や投資家に引き受けてもらっているものです。長期国債でも償還は10年ですから、10年後に買い手にお金で返す必要があります。10年前の国債は今償還期を迎えているように毎年償還しています。借金は無形のものではなく債権の形で実際に借金として存在しています。

 国の借金はいくらあるのですか。
→国と地方自治体の借金合計が700兆円もありますし、特殊法人も加えると1,000兆円とも言われています。家計に置き換えると年間収入が400万円に対して支出が800万円あるようなもので、借金の額は毎年増え続けています。

 ではお金を印刷して増やすと借金は帳消しになりますが、それは出来ないのですか。
→印刷して通貨供給量を増やすことは出来ますが、そうすると円の価値は下落しますし、インフレが起こります。個人で考えると長年に亘って苦労して預金してきたお金の価値が下がります。物価が需給バランスの均衡がとれるまで上昇するため、物価が安定している生活は今よりも厳しくなります。
 国レベルで見ると日本国への信用がなくなりますから、貿易や国間の取引が出来なくなります。国同士の取引は相手国の通貨安定を信頼してのものですから、その信頼を失すると交換は成り立たなくなります。日本国が借金返済のために通貨を印刷する行為は、円の価値を低下させるため国際的信頼を失墜させることになります。

 そのなる前に外貨に換金しておくと安全だと思うのですが。
→確かに外貨で預金しておくと円が下落しても安全は確保されます。ただ自分の国を見捨てる行為となりますから道義的問題が残ります。多くの人が円を売り経済成長が期待できる国の安定した外貨に換金すると、円は下落し日本国経済が不安定になります。

 借金を返す方法はありますか。
→現在の日本国の借金は莫大なので今すぐ返済するための手段はありません。出来るのは先に話したお金を印刷してインフレ化図ること。もうひとつはデフォルト、借金を返さないよと宣言することです。どちらも形の上では実行可能ですが現実問題としては無理です。
 時間がかかりますが構造改革により小さな行政府を目指し、無駄な公共事業を減少させる方法を追及する他ありません。国会の承認を得なくても自由に使える外郭団体にメスを入れることが課題です。郵便局の問題ですが、既に2年前、郵政公社に変革しているので国会のチェックが入るようになり無駄な支出は出来なくなっています。地方自治体においても外郭団体の支出については議会のチェック機能が働かせることは出来ないのです。 

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