175.能力の係数
 日本の中・高校生の体力は1980年がピークでした。体力の低下は学力の低下につながっています。高校生でも逆上がりが出来ない生徒がいるようで、体力の低下は深刻な問題です。女子スポーツ部は人気が無く、昔から人気のある女子バレーですが6人の部員が集まらずに成立しない高校も出現し始めています。おしゃれとファッション性が高い女生徒ですが汗は苦手なようです。
 動物園のサルは危機管理が出来ていません。ある動物園の事例ですが、サルの檻が老朽化したので隣に新設し移し変えようと飼育員が捕まえにかかると、パニック症候群になり気絶したりひどいサルになると死亡したそうです。自然界から隔離された安住の地にいると、知らず知らずのうちに危機への備えが出来なくなります。
 野生のサルは一日60kmも移動しています。それは植物の獲得など生きるために必要だからです。動物園のサルと比較すると危機感と運動量は比較になりません。人間は動物ですから、子ども達に動物園の様な環境を与えてしまった大人の責任があります。
 
 シェークスピアは「観ることが最高の教育であり、観られることが最高の学習である」と言葉を残しています。正にその通りで、まず現場に行くことで現実が分かり自分に不足していることが分かります。マラソンランナーの高橋尚子さんは、大学まで全く無名のランナーでした。ある時、世界選手権レベルの選手の合宿に参加しました。世界トップレベルの選手と練習をして、世界レベルのトレーニング方法や食事方法はどの様なものか分かったのです。情報化社会ですから効率的なトレーニング方法は知っていて頭で理解しているのですが、実際に現場の空気に触れることで気づきがあったのです。トップレベルの選手といるだけでレベルが体感出来ますから目標が身近で明確なものになります。このトレーニングを行なうとこうなる、食事を正しく取ることでこんな体を作れることが分かります。観ることによる気付きは最高の教材です。
 
 人間の能力はY=aXで表すことが出来ます。これは養老孟司先生の著書に書かれている公式です。
 Yは出力で人間の能力を表します。
 Xは入力する要素で、遺伝子(DNA)などです。私達に組み込まれている遺伝子は、長い時間との競争に打ち勝ってきて勝ち組の遺伝子で、人間の遺伝子は99.99%同じものです。
つまり誰でも持って生まれた能力に差はありません。
 問題は係数のaですaは、心、感性、良心、氣、環境、習慣を表しています。心の持ち方や良い習慣、周囲の環境の良し悪しが、人間の能力形成過程に影響を与えます。係数は変化させることが出来ますから、やる気になれば、何時でも自分の意思で係数を大きく出来ます。
 係数を高める方法には、メンタルトレーニング。夢中になる、好きになる、気付き、出会いなどがあります。信じれば適うことを信じて自分を高めることです。ギリシア神話に登場する彫刻家のピグマリオンは理想の女性を彫刻で彫りました。毎日のように彫刻に向かって理想の女性の出現を願っていたところ、ゼウスの思し召しにより彫刻が人間に姿を変えたのです。本気になって願えば適うことを示す神話です。作り話と取るか教訓として捉えるかも心の持ち方ひとつです。この話を信じるか信じないかもaを左右します。こんな簡単な神話を信じることが出来ないで、困難なことに挑む事は出来ません。
 困難に立ち向かうと必ず障害は出現します。そこで信じることが出来るか出来ないか、大きな成果を達成するのは小さな行為の積み重ねです。物事を前向きに捉えられることが行動を左右します。潜在能力を活性化させるには感動体験をすることが一番ですが、前向き行動は感動体験につながります。

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