158.公立幼稚園廃園
 大新幼稚園と西山東幼稚園2園の廃園が決定する条例が可決されました。私の考え方を記します。2園が廃園となりますが代替案があります。西山東幼稚園は廃園となりますが、近い将来この場所で幼稚園と保育所を一体とした幼保併設の教育施設を建設する計画を市長と教育委員会が約束してくれています。廃園してこの地域に子どもの教育施設を無くするのではなく、より地域で有益な教育施設が誕生する予定です。全国的には幼保併設施設が検討されていますし、和歌山県内でも白浜町にその施設があると聞いています。
 西山東に本施設が出来ると、和歌山市で初めての先進的な施設となります。少子化が進む中で地域における先進事例となります。西山東幼稚園廃園の見返りに、幼保併設施設を設置することを確約出来たことから廃園する条例案に賛成しました。
 大新幼稚園の場合です。確かに大新地域に幼稚園は無くなりますが、代替案として隣接している大新小学校を建替えする計画があります。大新小学校は老朽化が進んでいますが、和歌山市の財政が厳しいため建替えを早期に実現するのは難しい状況です。そこで人数が減少している大新幼稚園を廃園とする代わりに、大新小学校の建替えと施設の充実を市長と教育委員会が確約してくれました。
 心情的には、廃園に至る経緯が不自然なことから幼稚園廃園反対活動を展開してきた保護者の皆さんは納得しきれない部分があると思っています。しかし、大新地域全体のあり方を大局的に考え、小学校教育施設の充実と大震災に備えて小学校を避難地域として活用出来る施設とすることを良しとして、苦渋の決断をしてくれたものと思っています。
 幼稚園が存続して欲しいのが本心でしょうが、その気持ちを飲み込んで納得してくれた
のです。2年間の保護者の活動は身近で接して素晴らしいものでした。子ども達の教育環境を守るために体を張っての戦いでした。

 本会議に廃園を意味する条例改正案が提案されたことで、このまま反対運動を継続するのか、代替案を飲むのかの決断が迫られました。本当に厳しい判断を迫られました。私の判断基準は、保護者が考えた末に出してくれる言葉だけです。2年間必死に活動してきた実績と思いは大変重いものです。保護者以外に判断を下せる人はいないのです。
 保護者からやはり最後まで存続に尽力して欲しいとの言葉があれば、その意向に沿った形をとったでしょうし、思いが交錯する中で代替案を了承するとの言葉があれば廃園に賛成し、後工程の早期実現に向けて取り組むことと内心では決めていました。

 最終的に判断したのは常任委員会が始まる直前でした。常任委員会前に保護者代表の方たちと意見交換と最終的な保護者の判断を言葉で確認しました。その結論を持って私も意思決定しました。
 保護者の真剣な活動に接して来ただけに、言葉の裏側、心の中に存続させたい気持ちが潜んでいることも感じました。でも存続させたい思いを包み込んで代替案に賛意を表した苦しい言葉でもやはり尊重すべきです。廃園で突っ走ることも可能でしたが、どちらに転んでも苦しい状態でしたから、やっと振り下ろした拳を再び振りかざすような問い掛けはすべきではないのです。決心を揺らがせるような誘導をすれば、苦しむのはやはり保護者です。これ以上保護者の方に、厳しい判断を迫るような苦しみを与えたらいけないとの思いがありました。それが条例に賛成した理由です。

 一方、反省は2点です。この判断の中に子ども達が関与していたのか、子どもの事なのに大人だけで進めてしまい子ども達の思いはここに存在していたのか。不明確になったことがひとつ。もうひとつは、保護者が議員と懇談する場合、言葉を選んでいることに気付くべきであったと言うこと。自分では同じ立場でいるつもりなのですが、相手はそうは取っていないとある記者から指摘を受けました。保護者が議員に思っていることを全て言えますか、議員に言われたことに保護者は反論出来ますかと問われたのです。自分では打ち解けていたと信じていますが、その答えは分かっていません。配慮が足りなかったとしたら謙虚に反省しています。

 さて、条例が可決したと言っても、保護者の方々が流した涙と苦しい思いを無駄にしてはいけないのです。関わった方達の思いを受け取り、その苦い思いを次につなげて行くことが大切なことですから、しっかりとその思いは受け取ったつもりです。
 廃園したことで保護者の方々は傷ついています。結果的に廃園が正解か不正解なのか、今の私には分かりません。答えが出るのは、西山東に新しい幼児教育施設が出来た時、大新小学校新校舎が完成した時以降です。それは数年後になりますが、地域にとって有益なものになり、今回活動に参加した保護者が、私達の活動は間違っていなかったと思ってくれたなら今回の判断は正解と言えます。
 そう思ってくれるには、新しい建物を作るだけではなく、地域の方と保護者の意見を織り込んだ施設に仕上げるための過程が大切です。一方的に地方自治体が全てを決定するのではなく、関係者を交えた検討委員会を立ち上げ、意見を反映させた施設にすることで納得出来るものになります。
 地域の中の教育について、教育委員会と保護者が一緒に作り上げるしくみを築けたことが今回の成果です。お互いが協力して地域で必要不可欠に子ども達の教育施設を作っていく、その過程に参画することで良いものとなります。その形が出来たなら、数年後にはあの時の判断は正解だったと、今度は涙ではなく笑顔で話してくれる筈です。
 たくさんの人達の涙と色々な思いを乗せて、私達の時間は過ぎ去っていきます。歴史に記された結果の裏側には、人が織りなしたドラマがあります。例え結果は同じだとしても、誰が関わったのか、取り組み方の真剣さの度合いによって重みが違ってきます。
 保護者はどう思っているか分かりませんが、私は保護者の方を戦友だと受け止めています。ですから私にとってもこの2年間は、生涯忘れられないものとなっています。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ