104.石毛宏典さんとの
        人生論談義
 元西武ライオンズ、福岡ダイエーホークスのプレーヤーで、オリックスブルーウェーブの監督の石毛宏典さんはIBLJを設立し、四国で独立リーグを立ち上げるための活動を展開しています。石毛さんとの話です。
 人生観について。
 人類の歴史上、時代を変えたのは外部からの圧力か内部崩壊と再生のどちらかです。現代の日本経済界でも同様で、ゴーン氏の下で再生した日産自動車は前者の例、奥田会長のリーダーシップの下、内部からの人材登用で収益を上げ続けているのはトヨタ自動車です。自分や組織を変えるのは、既存の組織文化が定着している中からでは難しいものです。違う価値観を持ったトップの登用か、新しい感覚を持った人の登場を待つ他にありません。同じ考えを持つ人への世襲や禅譲では変革はあり得ません。

 失敗の経験をした人は、多少でも成功の経験をしたことのある人です。挑戦しない人の人生には失敗もありません。リスクを背負うことでチャンスも訪れてくれます。
 石毛さんの成功例は、プロ野球の一軍監督になれたことです。70人のプロ野球の歴史上、一軍監督経験者(シーズン当初から任された人に限定。代理監督は含みません)は159人です。何万人の中の159人に入れたことは間違いなく成功です。
 失敗は1年4ヶ月で解任されたことです。どちらも経験したことが今の石毛さんの行動に結びついています。
 
 アマチュアとは、他人の敷いてくれたレールの上を走っている人を指します。プロは自分でレールを敷きながら走れる人です。組織内において、上からの指示や決められた範囲内のことをしている内はアマチュアの域を出ていません。
 レールを敷くとは目標を持つことです。目標を持ち具体的な行動につなげないとプロとは呼ばれません。石毛さんの場合、将来はアマチュアを含めて野球の指導者になることを目標に掲げました。そのために、まずプロになりその中でも指導者で残るためには一流になる必要がありますから人一倍練習に励みました。行動を起こすことだけが目標に近づく手段です。プロ入りした横一線の中で、そこから一流への道が開けます。

 プロは不安と冒険の場です。不安に勝つには冒険をしなくてはなりません。不安を抱えたまま、嵐が過ぎ去るのを待っても残るものはありません。冒険をすることで嵐から身を守ることが出来ます。
 その場にいると助けてくれる人にも出会いません。冒険心を持てば人生で出会うべき人とは必ず出会います。早すぎず遅すぎず会うようになっています。それに気づき、アドバイスを受け入れられる素直な気持ちになることで冒険は先に進めます。

 石毛さんは毎年元旦に、その年のテーマを決めて生きる道を模索しています。
「前心」。人より前に出ることで、色々なものに触ることが出来ます。見ることが出来ます。人よりも後にいては触れることは出来ませんから、同じ場にいても大きな違いとなります。
「朴心(ぼくしん)」。少し成功したら初心に帰ること。天狗になってはいけません。
「根心(こんしん)」。きれいな花でも根は見えません。でも根がないときれいな花は咲きません。人も同じで、気持ちやハート、熱意などは見えません。見えない部分が大切なのです。不思議なことに、人は見える部分ではなく見えない部分で評価をされます。私達は見えない部分を磨くことで人格を形成します。見栄えだけにお金を使うよりも、自分でも見えない人間の根の部分を磨きたいものです。
「耕心(こうしん)」。受け入れる気持ちがあると何でも素直に入ってきます。ひとつの価値観だけを持っていると、どんなに良いアドバイスをもらっても心に入ってきません。自分の中で何でも受け入れられる気持ちを持つことです。
 「捨身」。自分のものを捨てることは勇気が要ります。つかんだものは離したくないのが人間です。しかし離さないと新しいものは手にすることは出来ません。コップに水が入ったままだと、ほかの飲み物を注いでも溢れ出すだけです。両手にものを握っていては、欲しいものをつかむ事は出来ません。恐怖心があっても手放すことで、新しく入ってくるものがあります。

 生きている中で起こる事件で得た感情を、心の中で貯金することが財産になります。挫折や後悔、悲しいことがあるから、それをバネにして立ち向かうことが出来ます。大切なものは報酬やポストではないのです。それらを追い求めると目先のことだけに向かってしまいます。
 
 変える側の資質よりも変えられる側の資質が大切です。すぐれた指導者に教えられても、指導を受ける側が変わろうとする気持ちがないと変化は起こりません。うぬぼれと自信は変化を阻害する要因です。自分が正しいと思うことだけを実行しても限界があります。人の考え方を受け入れることで限界は拡がります。

 やりたいことがあると不安は消えます。四国独立リーグを立ち上げた時、多くの人から失敗するから止めろと言われました。でもプロ野球へ入った時からの人生目標でもあり、石毛さんは幸せを感じています。石毛さんは、この状態でいたとして再度監督の依頼が来るかもしれません。しかし当てのないオファーを待つよりも、自分で道を切り開きたい気持ちを持っています。
 自分の思いが負けなければ何とかなります。社会や他人の思い込みが自分の前に立ちはだかりますが、それに負けないことです。
 「創心」。2004年の石毛さんのテーマです。

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