56.現場の空気
 物事を判断する時に重要なものは現場の空気です。報告書や過去からの経緯、統計、市場調査結果も大切ですがあくまでも参考扱いです。判断する際に現場の空気を感じ取らないと判断の誤りを招く恐れがあります。
 最終判断者が現場に赴き空気を感じるのが最も良いのですが、全ての現場にいけないケースが多いのが実情です。その場合、当該部局が現場の空気を把握した上で判断者に報告することになります。正確に判断できる材料を提供すべきなのですが、ここで数値やアンケート結果、審議会の審議結果などから判断すると正確ではない情報となります。

 その報告を基にして判断者が判断すると、現場の意見と食い違いを見せます。トップが一度判断を下すと簡単には翻せなくなりますから現場からの情報は大切です。大きな判断を求める場合、構成員に求められるのは現場の空気を感じ取れる能力と、円満に問題解決するための施策を見極められる勘です。
 科学的データや提言内容は参考にはなりますが、現場を一番知っているのは当該部局員ですから、自分の考えとデータ類に差がある場合は、問題意識を持たなければなりません。
 データはあくまでもデータに過ぎませんから、最終的に信じるのはデータに加えて現場の空気から感じ取った自分の勘です。

 データに心を込めるためには、担当する人に現場空気を感じる能力が必要です。数値だけで人間社会で起きる問題は解決しません。基準、規定、ルール、前例、答申、権威、統計、アンケートなどに問題を当てはめて片付けようとしても上手くいきません。手続きに基づく仕事やルーチンワークだけをしていると、現場の空気を感じ取る能力は失われます。
 現実と真実は現場にあり、その方たちと話をすることで感じ取ることが出来ます。仮に結論は同じだとしても、机上で回答を導き出したものとは明らかに別物です。心の込められた仕事とそうでない仕事では、人々を納得させるために大きな差があります。

 定例的なものは、定められた手順に則り仕事を処理するだけ良いのですが、それ以外でトップの判断が必要なものについては、現場の空気を伝えることが大原則です。五感で伝えきれないこの空気を伝えきれる言葉と伝えられる感性を持たないと、大きな課題は常に問題を抱えたままとなります。これらの問題に対しては、人の資質による配置、現場で何度も話を聞く体制をとること、問題を先送りしない組織の体質に転換することが解決のための手段です。
 
 答えは現場にある、これは民間でも行政でも同じです。現場の空気を上手く伝えきることが担当に求められ、現場の空気を理解した上で判断することがトップに求められる姿勢です。課題解決のキーは現場の空気であることを認識しておきたいものです。

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